Column:本棚の一冊
2015年9月1日号
『赤の発見 青の発見』


悩む日に勇気をくれた一冊
基盤工学部電気電子情報工学科
佐松崇史 教授


光ファイバーの基礎研究や高輝度赤色・緑色発光ダイオードの開発など、光通信、半導体分野で多大な功績を残されている西澤潤一先生と、高輝度青色発光ダイオードの開発者の一人である中村修二先生の対談本である。

2001年に初版が発行され、14年に中村先生のノーベル賞受賞後に改訂普及版として再発行されている。著者それぞれの研究の経緯と研究に対する取り組みを中心に、教育問題や社会問題まで取り上げた内容となっている。

ちなみに本学の創立者・松前重義博士の業績について西澤先生が語っているNHK映像があり、現代文明論の中で紹介されることもあったので、電子工学分野の学生はもちろん、その他の学生もそのお名前を聞いたことがあるのではないだろうか。

発行ダイオードを含む半導体分野において、基礎研究から実用化まで数多くの日本人が貢献しているが、その研究者たちの中から年代も環境も経歴も違う著者らが対談するという意外性に驚き、この本を手に取った。実際は先駆者ならではの経験をもとに対談が進められ、お互いに共感する話題が多く収められている。購読した年当時の私自身は、研究を思うように進められずに悩んでいた。著者らの前人未到の領域へのチャレンジは、両者に共通する工夫と執念の技術者魂により、次から次へと現れる壁を物ともせず、世界的な発見へとつなげている。当時自分が突き当たっている研究や仕事上の悩みは、実は大したことがないと気づかされ、勇気をいただいたように記憶している。

授業、部活、学生プロジェクト、アルバイト、人間関係、たくさんの問題を抱え優先順位をつけられずに悩んでいる学生が多く見受けられる。個人的な問題は、助言はできるにしろ、最終的に自分で判断し解決しないといけない。悩み多き学生にとって成功例はつらい内容かもしれないが、この本が問題を解決する一つのきっかけとなるのではと思う。

将来研究者を目指す学生や理系学生はもちろん、悩み多き学生にも読んでほしい一冊である。


『赤の発見、青の発見』
西澤潤一、中村修二著
白日社刊

 
さまつ・たかし1968年熊本県生まれ。熊本大学工学部卒業。九州工業大学大学院情報工学研究科情報科学専攻単位取得満期退学。博士(情報工学)。専門は知的情報処理。