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特集

2015/10/01
教育の現場から
話題の授業や地域・企業と連携した課外活動など、東海大学の特色ある教育現場に迫ります。

政治経済学部の自治体インターンシップ

学生が行政の実務を体験
現場を通して職業観を養う


地方公務員の仕事現場を経験して公務員の実像を知ろう――。政治経済学部政治学科が近隣の自治体の協力を得て10年ほど前から開講しているサマーセッション科目「自治体インターンシップ」。今年度は8月から9月にかけて、神奈川県内の6市町(相模原市、平塚市、小田原市、秦野市、伊勢原市、大磯町)に同学科の学生24人が派遣された。

政治、行政のシステムや政策課題を専門的に学ぶ政治学科は、「政治基礎」と「地方行政」「国際政治」の3コース制を導入している。「自治体インターンシップ」は、地方自治の理論と実際を学ぶ「地方行政コース」のプログラムとして開講されている。

授業を担当する出雲明子准教授は、「授業で専門的に学んだ内容を実地で確認し、自治体の仕事への理解を深め、具体的な公務員像の育成につなげることが狙い。科目として開講しているため自治体から継続的に協力を得ることができ、独自のプログラムを組んでもらえるなど充実した内容になっているのも特徴です」と語る。

体験する業務は、毎日異なる部署を経験するものや、他大学の学生とともに取り組むものなど、自治体ごとにさまざまだが、どれも多彩なプログラムが用意されている。

参加前には事前勉強理解を深めて現場へ

学生たちは6月から事前勉強会を受講。基本的なマナーを学んだ後、派遣先ごとにグループをつくり、派遣先の理解を深めるために自治体の人口構成や将来の動向、政策の特徴、将来的な課題などを調査。自治体のホームページで公開されている情報などを収集した。

さらにフィールドワークも行って、強みや弱点を分析。授業で結果を発表し、学生同士で他の自治体との違いなどを議論した。三沢直人さん(3年)は、「公務員を目指しており、在学中に直接仕事に触れることができるのが何よりも魅力。事前に分析したことで派遣先の理解も深まった」と語った。

窓口の裏側を経験し公務員の奥深さ知る

インターンシップが始まると、学生たちは1週間から10日程度、役所に出勤。8月6日から15日にかけて実施された秦野市のプログラムでは、初日にオリエンテーションで市役所や市議会の仕組みを学んだ後、清掃工場を見学し、公務員に必要な資質を議論するワークショップを行った。

その後、公共施設再配置推進課や広報課、観光課など10部署の仕事のうち5つを体験。公共施設再配置推進課では、公民館や図書館といった公共施設を取り巻く現状や同課の業務について説明を受けた後、学生の出身地の財務状況や将来の人口構成のデータを集めて秦野市との比較データを作成。政策立案の資料作りに携わった。

安岡優介さん(同)は、「公務員は書類仕事が中心だと思っていたけれど、実際は情報分析や政策立案業務が多いことを知った。政策は一人で実現できるものではなく、市民や同僚などの意見を反映させることが大切。コミュニケーション力が必要なのだと実感しました」と話す。また矢口拓実さん(同)は、「仕事の幅広さを実感し、市民にどう接するべきなのかを学び、理想の公務員像を考えるきっかけにもなった」と語った。

毎日の業務終了後には日誌を作成。仕事の内容や反省点をまとめ、各課の担当者からコメントをもらい、最終的には学科に報告書を提出した。

同学科ではこのほかにもNPO団体と連携した「NPO・NGOインターンシップ」を開講するなど、自治体や団体と連携した取り組みを数多く展開している。出雲准教授は、「今後も自治体や社会活動団体と連携して、より良い教育を実現していきたい」と話している。


自治体の担当者から
秦野市市長室人事課人材育成担当 吉田健智さん
秦野市では例年、多くの職場を経験し、より多角的に公務員の仕事を知ってもらおうと複数の部署の業務に従事するプログラムを作成しています。学生の皆さんから見れば、「こんなことも行政の仕事だったのか」と驚くことが多いと思います。仕事を通してそうした実感を数多く持ってもらい、公務員のやりがいや幅広さを知り、職業選択の参考にしてもらえればいいですね。インターンシップに参加した学生たちと一緒に、同僚としてより良い街をつくる仕事ができることを期待しています。

学科主任に聞く 地域の課題に自ら取り組める人材を
政治経済学部政治学科主任 小林 隆 教授
このプログラムは、授業と現場経験を組み合わせることで、理論と実践の両面から自治体についての理解を深められるよう工夫されています。

近年、卒業後に自分の出身地に帰って地元に貢献したいと考え、本学科に入学する学生が多くなってきています。そうした学生にとっては、採用試験を受ける前に雰囲気や仕事内容を知り、自分に合っている仕事なのか見極め、学習への意欲をより高める機会にもなっていると感じています。

かつて公務員は安定職として捉えられていましたが、実情は大きく変わってきています。少子高齢化に伴い、厳しい財政をやりくりしながら効率性と公平性を重視し、さまざまな意見を持つ住民とのコミュニケーションを図り、条例等のルールに基づいて政策を実行する能力が求められています。

政治学は、正当性を確保しながら人と協力して問題を解決する方法を学ぶ学問ですが、公務員にはまさにその力が求められる時代になってきています。本学科では、教員と学生のコミュニケーションを基礎に置いた少人数型の授業を多く取り入れるなど、自ら問題を発見し解決に導く力を磨く授業を数多く展開しています。今後も授業を通じて、社会の主人公となって地域の問題解決に取り組める人材の育成に力を入れていきたいと考えています。
 
(写真上から)
▼秦野市の公共施設再配置推進課の志村高史課長の指導を受けながら、データ整理に取り組む学生たち
▼事前勉強会では、学生同士のディスカッションも行われた
▼秦野市広報課の業務の一環で、地元テレビ局の撮影に協力する学生たち。「公務員の仕事はさまざまな人と協力して成り立つのだと実感した。この仕事につきたいという思いが強くなりました」と話していた

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