News:学生
2015年12月1日号
苦しい戦いの末に見た風景
ライトパワープロジェクト・ソーラーカーチーム
赤土の大地でのデッドヒート



オーストラリアのダーウィンからアデレードまでの約3000キロを舞台に10月18日から25日まで開かれた「ブリヂストン・ワールド・ソーラー・チャレンジ」で、チャレンジセンター「ライトパワープロジェクト」ソーラーカーチームが総合3位入賞を果たした。かつてない苦戦を強いられる中、日本を代表するチームとして最後まで戦い抜いた20人の学生と教職員の日々を追った。

Part.1 迫るタイムリミット 予選出走への奮闘

10月7日から、レースのスタート地点となるダーウィンのトヨタ・ダーウィン・ブランチでマシンの整備を始めた東海大学チーム。

日本でもテストを重ねてきたが、電気系統のパーツが完成していないなど課題も残っていた。「絶対優勝したい。不安もあるけれど、そのためにはすべての課題をクリアしなければ」。準優勝となった2013年大会の悔しさを知る横内宏樹さん(工学部4年)が語るように、限られた時間を有効に使おうと連日夜遅くまでレースの準備を続けた。

そのかいあって、13、14日に予選会場のヒドゥンバレー・サーキットで行われたテストでは順調に走行。チームマネジャーの大塚隆司さん(大学院工学研究科1年)は「これならいける。公式車検も通ると思う。レース中の充電作業の練習が不十分なので、そこをクリアしておきたい」と笑顔を浮かべていた。

ところが公式車検で思わぬ問題に遭遇する。変更の難しい電気系統で安全装置を修正するよう、オフィシャルから指摘を受けてしまったのだ。

長年チームを指導してきた木村英樹総監督(チャレンジセンター所長)ですら険しい表情を浮かべる事態。それでも、「難しいことはわかっている。だけどやるしかない」と阿部涼平さん(工学部2年)。電気系統を担当するメンバーはチームに帯同していた卒業生や木村教授らの力を借りながら徹夜で作業し、翌朝にシステムが完成した。再車検も無事通過、緊張から解き放たれたメンバーは安堵の表情を浮かべていた。

予選では、優勝した09年と11年大会とほぼ同じ2分4秒台で、出走42チーム中8位をキープ。充電の練習が遅れがちになるなど課題を残しつつも、「この日を迎えられて本当によかった。困難に打ち勝ったチーム力が武器になる。初日にさらに上位に上がってみせます」と意気込んでいた。

Part.2 たび重なるトラブル 最後に待っていたドラマ

18日に始まったレースで東海大チームはスタートダッシュに成功。初日終了時には2位にジャンプアップを果たす。横井泰之さん(工学部2年)は、「多くの人の支えがあってこの順位にいられる。ここからは学生がしっかり責任を果たしたい」と気を引き締めていた。 

ところがその翌日、悪夢のような展開がチームを襲う。ライバルのミシガン大学との競り合いで東海大チームに危険な走行があったとして2回のペナルティーを受け、さらにタイヤが相次いでパンク。大会規定で定められている停車地点コントロール・ストップでの作業でも、練習不足からミスが相次ぎ、順位を大きく落として5位になってしまう。チーム内には、「なんでこんな目にあうんだ」と不満が高まっていった。

ばらばらになったチームを救ったのは、その晩から始めたミーティングだった。「もう一度結束し直したい」と、リーダーの大塚さんが呼びかけてメンバー全員が参加。互いの不満をぶつけ合い、改善点を話し合った。3日目、4日目も苦しい展開は続いたが、チーム力は目覚ましく向上。福田紘大監督(工学部准教授)も「驚くほど成長している」と語るほど朝晩の充電でもテキパキと作業できるようになっていった。「終わるまで何があるかわからないのがレース。絶対にあきらめない」(高柳光希さん・工学部3年)。その決意はいつしか全員の思いとなっていた。

そして迎えた5日目。奮闘が実を結び、ゴール直前でミシガン大を追い抜いて総合3位入賞を果たした。

学生たちは、「信じてきたことが報われた。最高の気分です」(栗原慎太郎さん・情報理工学部3年)、「仲間がいたからここまでこれた。一緒に戦ってきたメンバーに感謝したい」(アショー・アハメドさん・同)と喜びを爆発させていた。

木村総監督も、「今大会は過去になくレベルが高かった。その厳しいレースを戦い抜いたことで学生たちは大きく成長してくれた。この経験は次の勝利につながる大きな財産になる」とたたえた。

Part.3 ライバルに学び次の大会に生かす 

東海大チームは翌23日から、ゴール地点のビクトリアスクエアで行われた展示会にも参加。来場者にマシンを紹介するかたわら、東海大に1時間の差をつけて優勝したオランダ・デルフト工科大や2位のトゥエンテ大学のメンバーと情報交換を重ねていった。

ライバルからは「他のトップチームの学生は1年半ほど大学を休学して参加している。勉強しながら上位に入った東海大はすごい」との称賛の声が数多く送られた今回のチーム。「でも、同じ状況で09年と11年には優勝している。今大会で差を生んだのは何だったのか」。学生たちは自問を続けていた。

大塚さんは、「トップとの差は、トラブルとペナルティーで費やした時間とほぼ一緒。マシンの性能ではなくチームの総合力が勝敗を分けた」と悔しがった。そして「どうすれば勝てるチームができるのか今はまだ答えがない。でも、必ず見つけて次の世代に引き継ぎたい」と決意を語った。

初参加だった山之内七海さん(工学部1年)は、「技術力で学生が足りなかったところもあると思う。次のマシン開発に少しでも役立てたい」とライバルのマシンを積極的に見学し、気がついた点を記録。また花房裕槻さん(同3年)も、「ライバルには、僕たちにない発想がある。できるだけ多くのことを吸収して次の大会につなげたい」と語っていた。

25日の表彰式では、会場から大きな拍手と歓声に包まれる中、記念トロフィーを受け取った学生たち。今回の悔しさをばねに、次の大会での優勝を誓っていた。



 
(写真上から)
▼サポートスタッフとして参加した卒業生らと修正した電気系統をチェックする学生たち。他のメンバーは、「後は彼らに託すだけ」と、レースに向けた最終準備を続けていた
▼2日目以降、毎日の恒例となったミーティング
▼他チームのメンバーと熱心に意見を交換
▼ライバルと健闘をたたえ合った表彰式