特集:研究室おじゃまします!
2015年12月1日号
授水中ロボットの開発を推進
海洋など自然環境調査で活用

海洋学部航海工学科海洋機械工学専攻 坂上憲光 准教授

人間が容易に立ち入れない危険な場所にどんどんと進んでいき、複雑な作業を効率的にこなす――建築や社会インフラの整備、製造業に環境保全、災害対策などさまざまな分野で今、ロボットが導入されている。ダイバーに代わって水中での作業にあたる「水中ロボット」の開発に取り組む海洋学部航海工学科海洋機械工学専攻の坂上憲光准教授の研究室を訪ねた。

「水中での作業」とひとことで言っても用途は多種多様だが、坂上准教授が開発を目指しているのは、誰でも操作でき、小型で軽量かつ器用な作業ができるロボット。海底や湖底の泥を採取したり、人間と同じサイズの“腕”を使って水中に沈むモノを持ってきたり、搭載したカメラで海中の遺跡を撮影するとともにGPSで位置を特定したりと、海洋をはじめとした自然環境に関する調査・研究の場で活躍するものだ。

「水中の泥の採取では、広大なエリアで何カ所も潜っては泥を取ってを繰り返さなければならず、ダイバーでは効率的に作業できません。ロボットならプログラミングして自動で複数個所の採泥を繰り返せる。また、人が潜るには酸素や水深の制限があり、危険を伴いますが、ロボットなら問題は全くありません」と坂上准教授は語る。

ハードもソフトも製作社会の要望に応える
坂上准教授の研究室では、ロボットの設計、組み立てからソフトウェアでの制御まですべてをこなす。「ハードもソフトも自分たちの手で一からすべて作ることで、すぐに改造できる。共同研究先からの要望にも機敏に対応できます」。そうして作られたロボットは他大学や多くの企業との共同研究で活用されている。

水中ロボット開発は国土交通省の「次世代社会インフラ用ロボット開発・導入重点分野」にも指定され、社会的な需要も高まっている。たとえばダムではゲート設備や放流管の中の腐食や損傷、変形の調査にあたって、直接目で見るのと同じ機能を持ったロボットが必要であり、大手企業でも開発が進んでいるという。

「私の研究室でも昨年度から立命館大学と関西工事測量(株)との共同研究でダムの検査用ロボット開発に取り組んでいます。さらにロボットアームでの複雑な作業も実現させたい」

教育活動にも応用海中遺跡を散策
一方で、「ロボットを教育活動にも生かしたい」と、海洋学部の他学科と連携した活動も積極的に進めている。海洋文明学科の小野林太郎准教授、環境社会学科の李銀姫准教授らと、石垣島の中高生を対象に海への関心、興味を高めてもらおうと環境教室を継続して開催。11月7日にも「水中ロボットを利用した文化遺産教室」を開いた。

これらには坂上研究室で開発したゲームコントローラーで操作可能なロボットが用いられ、参加者は搭載されたカメラからの画像を通し海中遺跡を散策できる仕組みだ。

「科学技術が海や環境に対する人々の関心にどれだけ影響するのか、参加者の方たちが考える機会になれば。海洋学部は“海の総合学部”。その活動の一翼を担っていきたい」

(写真)同専攻の寺尾裕教授と共同で、波のエネルギーで推進するボートの開発にも取り組んでいる


坂上研究室で開発されたロボットたち

水中採泥ロボット「海剣(みつるぎ)」
重さは約34キロで、採泥用のパイプが搭載されている。GPSと方位計などを使って自動的な採泥が可能。立命館大学、応用地質(株)との共同研究に活用されている




グリッパロボット「有手海(あるてみ)」
中央に大きなグリッパ(手)があり、水中での細かい作業を実現。操縦装置も併せて開発し、誰でも操作可能なロボットに。重さは約30キロ



ケイちゃん
石垣島屋良部崎沖での海底遺跡調査等で活躍。総合地球環境学研究所ACプロジェクト(プロジェクトリーダー・総合地球環境学研究所 石川智士准教授)や東海大学連合後援会研究助成「国境離島における海洋利用に視点をおいた環境教育と地域振興に関する研究」(研究代表者・山田吉彦教授)の活動の一部で利用されている(写真=水中文化遺産カメラマン・山本遊児)





focus
人との出会いに支えられ
“とりあえず一生懸命”打ち込む


「小さなころから動くものが大好き。仕組みが知りたくて車のおもちゃや変形ロボットを分解するけれど元に戻せず1本ネジが余ってしまう……よくいる子どもでしたね」と笑う坂上准教授。

中高生のころには機械工学の道を志し、大学時代にロボットに出会う。「初めは陸上のロボット研究に取り組んでいたのですが、当時学んでいたキャンパスの近くに琵琶湖があったことから水中ロボットの開発を始めることになりました」

とはいえ最初は失敗の繰り返し。湖に運んでも動かず、部品に水が入っては壊れ……あきらめそうになったこともあるが、そのつど「人と出会い、仲間が増え、助けも得られて続けられた」と振り返る。

「研究者への道を進むことを迷った時期もありました。そんなとき背中を押してくれたのは、学生結婚していた妻の“あなたには大学が向いている”のひとこと。多くの人に支えられて今に続いています」

口癖は“とりあえず一生懸命やるか”。「不平不満を言っていても現状は変わらない。一生懸命取り組んでいると、その姿は周囲が見てくれているものです。学生たちにも前向きに頑張ることの大切さを伝えていきたいですね」

 
さかがみ・のりみつ
1974年生まれ、滋賀県出身。立命館大学大学院理工学研究科機械システム専攻博士後期課程修了、博士(工学)。立命館大理工学部助手を経て、2004年度より東海大学海洋学部に着任。大学共同利用機関法人人間文化研究機構共同研究員なども務める。