Column:知の架け橋
2016年1月1日号
「国際化を考える」
体育学部スポーツ・レジャーマネジメント学科 松浪 稔 教授

国際協力に必要な相互理解
スポーツは異文化交流への近道


「国際協力」とか「海外ボランティア」と聞くと、「自分には無理だ」「英語ができない」と、何か大変難しいことのような印象を持つ人もいるでしょう。でも、案外そうではないかもしれません。

2013年9月、アルゼンチン・ブエノスアイレスで開催された国際オリンピック委員会(IOC)の総会で20年のオリンピック・パラリンピックの東京開催が決定しました。このとき、安倍晋三総理は招致演説で、「Sport for Tomorrow」について言及しました。「Sport for Tomorrow」は日本政府が行うスポーツ分野における国際協力で、14年から20年までの7年間で開発途上国をはじめとする100カ国以上、1000万人以上を対象に、スポーツで国際協力する事業(スポーツ指導者の派遣など)です。

そこで注目されるのが、青年海外協力隊です。スポーツでも国際協力ができるし、その担い手が求められているのです。青年海外協力隊は、日本が行う政府開発援助(ODA)の一つで海外ボランティア派遣の制度です。外務省所管の国際協力機構(JICA)の行う事業で、JICAボランティアともいわれています。農林水産、商業・観光、人的資源、保健医療、社会福祉、スポーツなどの分野、120以上の職種があり、隊員は2年間(1カ月から1年未満の短期派遣もある)にわたり、いわゆる開発途上国などで、その国の人づくり、国づくりをお手伝いしています。

実は、青年海外協力隊に参加してスポーツ指導などをしている東海大学の卒業生はたくさんいます。国際協力の現場で必要なのは、自分の考えを伝えることができる「コミュニケーション力」、日本と異なる環境への「適応力」「状況判断力」、相手のことを「聞く力」です。自国の文化を知り、異文化を理解する。そして相手の立場で物事を考えることができる。このような態度が相互理解には必要です。つまり、国際協力には、英語力や技術を伝える能力以上に、人間同士のふれあいが求められるのです。だからこそ身体文化であるスポーツが有効になります。髪や肌の色が違ったりする人間ですが、身体はみんな同じです。体を媒介としたコミュニケーションであるスポーツは異文化理解への近道ですし、人間同士のふれあいを通じてお互いが友達になる場でもあるのです。

戦争や武器の使用で世界は平和になりません。悲しみや憎しみを増やすだけです。でも、世界中の人々と友達になることは、世界平和への懸け橋になります。海外ボランティアはその入り口になるでしょう。大学での学びを生かし、自分のできることを見つけて、ぜひ、海外でのボランティアにもチャレンジしてほしいと思います。

 
(写真)体育学部を卒業し、青年海外協力隊で活躍する渡邉佳さん(中央)

まつなみ・みのる 1968年大阪府生まれ。早稲田大学人間科学部卒業。日本大学大学院文学研究科修了。修士(教育学)。青年海外協力隊に参加し、フィリピン国立レイテ師範大学で体育の教鞭をとる。日本体育大学大学院体育科学研究科博士後期課程単位取得満期退学。博士(体育科学)。専門はスポーツ史、スポーツ人類学など。