特集:東海大生200人に聞きました
2016年2月1日号
身近に迫るブラックバイト
無賃残業、過剰労働、暴力……

東海大生200人に「アルバイトをしたことがありますか?」と聞いたところ、74%が「はい」と回答。「週○日と定期的に働いている」学生が125人にのぼり、1カ月の収入は「月5万円以上〜10万円未満」の51人が最も多かった。学生生活の一部になっているともいえるアルバイトだが、近年、無賃残業や過剰な労働時間を強要される「ブラックバイト」が社会問題化している。はたして、東海大生の実情は?(構成・編集部)

厚生労働省が昨年、アルバイト経験のある大学生や専門学校生らを対象に実施した調査では、約6割が「採用時に合意した以上のシフト勤務を入れられた」「準備や片づけの時間に賃金が支払われなかった」といったアルバイト先でのトラブルを経験している。

今回のアンケートでは、「あなたの身の回りでブラックバイトの被害にあった人はいますか?」との問いに「はい」と答えた学生は24%だが、「長時間のタダ働きをさせられた」(海洋学部3年・男子)、「あまりにも忙しく、8時間働いて15分しか休憩がもらえなかった」(文学部1年・女子)との声が上がった。

「学業や健康に支障が出ることがあればすぐに辞めるべき」(産業工学部4年・男子)という声がある一方で、「『辞めさせてくれない』『自分が辞めたらほかの人がもっとつらくなる』と言って続けている人がいる」(工学部3年・女子)との意見も聞こえてくる。

では、どのように対処したらよいのか――。ブラックバイトを定義した中京大学の大内裕和教授らがまとめた、インターネット上の無料冊子『ブラックバイトへの対処法』では、「学生の経済的状況の悪化(奨学金制度の悪化)、労働市場の変化による非正規雇用者への依存度の上昇が背景にある」としたうえで、契約書、就業規則、給与明細の確認のほか、困ったらすぐ労働法のプロに相談しよう、証拠・メモを残そうと呼びかけている。

アンケートには、「周りの意見に惑わされてはいけない」(健康科学部1年・女子)、「自己防衛も大切」(生物学部4年・女子)との声も並ぶ。学生の本分は学業――アルバイトについてもう一度考えてみてはどうだろう。

Monitor’ Voice
飲食店でアルバイトをしていたときのことです。朝の開店作業でフライヤーに火をつけようとしたところ、漏れていたガスに引火し、前髪や眉毛、まつげまでが焦げ、鼻の中や右手の一部を負傷してしまいました。私を含めアルバイト4人で作業していたので、社員を呼んで事情を話すと、「面倒なことになるからほかの社員や社長には話さないように」と言われたのです。

以前にも同じようなことがあったといいますし、それ以外にも、長時間労働や深夜勤務に対する手当が出ないこともあります。しかし、今さらアルバイト先を変えるのもおっくうで今も同じ職場で働いています。アルバイトを始める前に、給料や業務内容についてもっと詳しく聞いておけばよかったと思っています。(健康科学部3年・女子)

Monitor’ Voice
私はホテルで接客のアルバイトをしていました。年末年始は人が足らず、10連勤。その直後に社員の方から今後のシフトについて話があり、「年明けはテストがあるためあまり働けない」と伝えると、「人手が足りているのに働かせてやっているんだから働けよ」と言われました。

年末年始の10連勤中は、毎日8時間労働を強いられ、疲れ果てていたので、そんなことを言われる筋合いはないと思い、辞めてしまいました。あれ以上つらい職場はないと思えばどんな仕事でも前向きに頑張れますし、今振り返ればいい経験になったと思います。ブラックバイトの被害にあわないためには、知り合いのいるところで働くのが一番。相談ができる環境を整えることが大切だと思います。(海洋学部1年・男子)

学生たちの声から
Q. あなたの身の回りで起こったブラックバイトの被害とは?
▶ 勤務時間が長く、テストのときにも休みをもらえない(生物学部3年・女子)
▶ パワーハラスメントや無賃残業(海洋学部4年・男子)
▶ 夜間の除雪作業のアルバイトで、労働した分の給料がもらえなかった(生物学部4年・男子)
▶ 深夜に自分一人だけですべての労働をさせられた(観光学部4年・男子)
▶ 深夜手当なし、休憩なし(情報通信学部2年・男子)
▶ ずっと研修扱いで、募集のときと実際に働き始めてからの時給が違った。出勤日数が削られ、給料が払われなかった(情報通信学部2年・男子)
▶ 「もうちょっと待ってくれない?」と言われて、結局給料が払われなかった(健康科学部1年・女子)

Q. ブラックバイトについて思うことは?
▶ 労働条件が悪い職場が増えているように思う。学生の本分が学業というのを理解してもらえないことも多いのではないか。「学生なのだから暇でしょう」と言われたこともある。経営者として人手不足なのはわかるが、学生に無理をさせるのはどうなのかと思う(生物学部3年・男子)
▶ 一つひとつ対処していき、そういう環境をなくすべき(国際文化学部4年・女子)
▶ このバイトを辞めてしまうと生活費が賄えないという人もいる。そこにつけこまれると辞められない状況に陥ってしまうように感じる(海洋学部3年・女子)
▶ アルバイトは自分の自由な時間を割いて働いているという立場から考えると、過酷な条件では納得がいかない。私なら、労働者と雇用者の信頼関係が崩れた時点で辞めると思う(医学部1年・女子)
▶ バイトに頼らないとやっていけないような企業を生み出す社会をどうにかしないと解決しないと思う(健康科学部1年・女子)
▶ 大手企業がもうかるような政策をするのではなく、労働環境がよくなるようにしてほしい。ブラックバイトがなくならないのは政府の責任(文学部1年・男子)
▶ 世の中は清く正しい仕事だけではないため、どこかで割りきる必要がある。ブラックバイトが騒がれているのは、連帯感や組織愛がないアルバイトによって氷山の一角が明るみに出ただけ(基盤工学部3年・女子)
▶ 法律に引っかかっていないのにブラックといっているのは社会を甘く見ている人だと思う(文学部1年・男子)
▶ つらかったら辞めればいい(文学部3年・男子)

学生たちへアドバイス
学業に支障をきたす前に一人で悩まず相談を
教学部学生課CLIC 中島聡司さん

アルバイト代が支払われない、サービス残業を強いられるといった学生からの相談は以前からあり、ここ数年で突然出てきたわけではないように思います。

学生のキャンパスライフに関する相談窓口であるCLICでは、暴力を振るわれたり、辞めさせるぞと脅されたりしたという相談を受けて、警察に被害届を出した例もあります。中には、自分が辞めると迷惑をかけてしまう、生活が困るから辞められないという学生もいました。

それぞれに事情がありますし、アルバイトは社会を知り将来を考えるきかっけにもなるでしょう。ブラックバイトという言葉に敏感になりすぎるのもよくないかもしれません。ですが、授業やテスト勉強に支障をきたす、精神的・肉体的に苦痛が生じるアルバイトに身を置き続けるのはいいことではありません。

湘南校舎では月1回程度、弁護士を招いた法律相談を行っていますし、CLICでも労働基準監督署などに相談に行くためのサポートをしています。どうしていいかわからないという人は、各校舎の学生窓口に相談に来てください。