Column:Point Of View
2016年3月1日号
かたちあるもの
高輪教養教育センター 田丸智也 准教授 

カセットテープの魅力が再評価されているようです。単にノスタルジックな魅力だけでなく、高音域が強調されたデジタルサウンドとは一味違った、角の取れた独特の音質に注目する人が増えています。ヴィンテージ機材を扱う中古販売業者、若者向けにカセットアルバムを特集し紹介するCDショップなど、実はちょっとしたブームになっています。米国のカセットテープ製造会社が2015年に過去最高益を記録するなど、日本だけでなくさまざまな国でこうした傾向が見られます。

2015年は「定額配信元年」と呼ばれていました。ICTを利用し、音楽や動画を月額数百円の料金で楽しめるサービスです。楽曲や映像は、もはや所有するのではなく、「シェアするもの」という新たなライフスタイルが提示されました。

学生と話をすると、まだまだ利用者は少なく、「ミュージシャンのためにもCDで購入する」という意見も聞けました。さまざまなものが、アプリやデータなど「情報」として扱われる今、「物体(かたち)がある」ということは逆に魅力的で、上記のカセットもこうした流れの中で、再び輝き始めたものなのでしょう。

湘南校舎の付属図書館には、貴重なアナログレコードが多数所蔵されています。特にジャズに関するライブラリは非常に充実していて、CD化されていない音源も多数存在します。これは、元医学部教授の牧田清志先生(「牧芳雄」というペンネームでジャズ評論家としても活躍されていました)が寄贈したもので、通称「牧田コレクション」と呼ばれているものです。これらの使用許可を得て、「ジャズを聴く」という公開講座を年6回行っています。参加者は学生からシニア世代までと幅広く、高解像度の音響機材と組み合わせると、「実はレコードは本当に音がよい」ということを実感できます。

スマートフォンでリモコンのように音楽をピピッと選曲して聴く大学生世代に、もっともっと魅力を伝えられたらと思っています。

(筆者は毎号交代します)

 
たまる・ともや
1974年東京都生まれ。バークリー音楽大学卒業。東海大学教養学部芸術学科非常勤講師を経て現職。専門はポピュラー音楽制作。