Column:知の架け橋
2016年3月1日号
「国際化を考える」(特別編)
東海大学 山田清志 学長

「内なる国際化」を進める
タフに生き抜く力をつけよう


近年、国境や地域をこえた人や物の移動が急速に広がる中、国内の大学にも「グローバル人材の育成」を求める声が高まっています。そうした社会の声に応える形で、語学教育や留学制度の充実をはじめとするさまざまな取り組みを伝えるニュースが日々の新聞や雑誌をにぎわせていることは皆さんもご存じのとおりだと思います。本学でも、教育・研究環境のグローバル化に向けた施策を本格化させており、この4月にはグローバル推進本部も発足します。

では、東海大学が育てる「グローバル人材」とは何でしょうか? 英語を話せればいいのでしょうか? 私は違うと思います。それは、「世界のどんな場所でもタフに生き抜ける人材」です。

日本の産業は科学技術とそれによる貿易が強みです。一方で、少子高齢化で国内経済は縮小し続け、仕事はどんどんなくなっています。企業はそうした社会の中で生き残ろうと、アジアやアフリカなど海外でビジネスを展開しており、今後もこの傾向が強まることは間違いありません。私は学生諸君に、そうしたビジネスの現場で新しい道を切り開ける人になってほしいと願っています。誤解を恐れずに言えば、英語は多少下手でもいいので、実直に自分の考えを伝える能力を身につけてほしいと思います。異なる文化や宗教を背景に持つ人と意思を通じ合い、コンビニもなければ電気も通っていない場所でビジネスを興せる。そうした人こそが、これからの日本を支えると思うのです。

また本学にとって、グローバル人材の育成は「原点回帰」でもあるのです。学園の創立者・松前重義博士はかつて「世界平和の建設のために・・・波乱の人生に打ち勝つ人材の育成」が不可欠だと語りました。寄宿舎「望星学塾」を設けて共同生活を通して成長する環境を整え、国際的な人材育成を実現するため冷戦時代のソ連や東欧諸国を含む世界中の大学との交流を積極的に推進してきました。その成果は目覚ましいものがあります。仕事柄国内外で多くの人に会いますが、本学の卒業生は驚くほど幅広い地域と分野で活躍しています。その原点に立ち返りたいのです。

本学では現在45カ国から約700人の学生を受け入れており、その反対に1000人をこえる学生が海外に留学しています。そうした人々の経験を多くの学生が共有し、自然と国際感覚を身につけ「内なる国際化」を進められる環境を学内につくることも、グローバル人材育成の一歩になると思います。なによりも重要なのは、当たり前のキャンパスライフの中に組み込んでいくことです。教職員にも本学の原点を見つめ直し、今まで以上に「内なる国際化」を積極的に担ってくれることを期待しています。それこそが、世界から評価されるグローバル大学「東海大学」の大きな礎となるはずです。

 

やまだ・きよし
1955年北海道生まれ。80年に早稲田大学法学部を卒業後、東海大学へ入職。経済法、消費者法などが専門。教養学部で教鞭をとりながら国際部門で要職につき、2009年に副学長。14年5月から学校法人東海大学常務理事を務め、同年10月から現職。