Column:Interview
2011年2月1日号
魚の供養碑調査を通じ、文化と生命を考察する


田口理恵 准教授(海洋学部海洋文明学科)




ウミガメやクジラ、イルカ、フグ、金魚……日本全国に1000基以上あるといわれる魚霊供養碑。海洋学部の田口理恵准教授が代表を務める「お魚供養研究会」では、2008年度から全国の水棲生物の供養碑を調査し、データベース化を通じて海洋資源と人とのかかわりについて考える研究に取り組んでいる。

「国内各地には、魚類だけでなくさまざまな生き物の供養碑があります。膨大な数の供養碑は、日本人の生活、文化、風習に生き物が密接にかかわっていることの表れといえるでしょう」。田口准教授の専門は文化人類学で、インドネシアやラオスなど東南アジア諸国で、物質文化や環境利用などの問題を調査してきた。「モノを媒介にして、人と自然とのかかわりを調査していく中で、国内の文化にも関心が広がっていきました。供養碑というモノは、学生のフィールドワークの素材としても、自分たちの国について知り、考える機会にもなると思いました」。

文献資料やインターネットにあたり、全国の魚霊碑情報を抽出。さらに各地の漁協や水産試験場など2124団体にアンケートの協力を求めた。そうして得た情報リストを基に実地調査へ。これまで静岡県の西伊豆や遠州灘、愛知県知多半島、千葉県房総半島、福井県敦賀市から石川県の能登半島を経て富山県氷見市まで、愛媛県松山市から宇和島市まで及ぶ伊予灘沿岸などを訪れた。次は2月4日から、三重県沿岸での調査を予定している。

「建立年代が判明している約700基を見ると、1800年代以前のものはほとんどがクジラの供養碑です。そこから捕鯨文化のあり方や救済を求める民衆の意思が見えてきます。江戸期以降は碑の種類も多様化していきますが、特に戦後はダム工事や海の埋め立てなど、人為によって大量死する生物に対する弔いの形として石碑が残されるのが印象的です」

この研究「魚霊供養からみる海洋資源の利用と変化―魚霊供養碑データベースの構築」は、09年度には文部科学省の科学研究費補助・挑戦的萌芽研究に採択。日本学術振興会や人間文化研究機構のプロジェクトを通じて学外との連携も進んでいる。

「供養碑データベースをインターネット上に公開して、誰もが見られる環境整備を目標にしています。毎日の食事を“なぜいただけるのか?”。背後には、食糧生産の現場での喜怒哀楽があり、石碑一つひとつの物語が、生産の現場や生命の尊さを考える機会につながればと考えています」

※田口准教授のインタビューが月刊『望星』4月号(発行:東海教育研究所/発売:東海大学出版会)に掲載されています。

 
(写真上)ウミガメの供養碑を調査する学生