Column:Point Of View
2016年5月1日号
ハリウッドと人種問題
教養学部国際学科 荒木圭子 准教授

ゴールデンウイークに向けて、アカデミー賞受賞作が日本でも次々に公開され始めている。同賞授賞式は、アメリカ映画界にとっては年に1度の晴れ舞台であるが、実はここ数年、人種問題が影を落としている。受賞者や受賞作品が白人優位であるとして、抗議の声が高まっているのだ。

今年は、2年連続で主演賞および助演賞の候補者20人が全員白人であったことから、著名な黒人俳優や監督がボイコットを表明した。この動きは、#OscarSoWhiteというハッシュタグがつくられるなどして話題を呼び、その後、同賞を主催するアカデミーは、「年配の白人男性」が会員の多数を占める現状を改革する方針を打ち出した。

そもそもハリウッド映画では、白人が主流であるなかで、黒人をはじめとするマイノリティが、ステレオタイプ(紋切り型)的に描かれてきた歴史がある。

『風と共に去りぬ』でハッティ・マクダニエルが演じたメイド役は、「マミー」と呼ばれる典型的な黒人女性のステレオタイプ(小太りで世話好き)で、『ティファニーで朝食を』では、出っ歯で分厚いメガネをかけ、LとRの発音の区別がつかない日系人が登場した(しかも演じたのは白人俳優!)。

2002年には、デンゼル・ワシントンが1963年のシドニー・ポワチエ以来39年ぶりに、またハル・ベリーが黒人女性として初めて、それぞれ主演賞を受賞した。しかし、受賞作での彼らの役柄は、どちらもステレオタイプ的であるとして、黒人社会からは「よりによってこの役で受賞するなんて……」という失望感もあらわにされた。

日本では、「人種」について考えるきっかけが圧倒的に少ない。特に「黒人」に関しては、日常的に出会う機会もあまりないだろう。しかし、ハリウッド映画などを通じて、ステレオタイプは国境をこえてそのまま入ってくる。

ハリウッド映画の主人公には白人男性が多いことを、私たちは当たり前のこととして受け入れていないだろうか。そもそも「アメリカ人」と聞いたら、即座に「白人」を思い浮かべていないだろうか。

「華やかな夢の世界」の背後にある現実にも目を向けてみよう。自分の持っているステレオタイプに気づかされるかもしれない。(執筆者は毎号交代します)

 
あらき・けいこ
1972年東京都生まれ。千葉県育ち。慶應義塾大学大学院後期博士課程単位取得退学。専門はアフリカン・ディアスポラ・スタディーズ。