Column:知の架け橋
2016年6月1日号
「幸福を考える」
政治経済学部政治学科 出雲明子 准教授

進む市民の行政参加
協働が人生の楽しみに


政治学や行政学は、公共の活動に関して学ぶ分野です。政治家や公務員にならなければ社会に出たとき、あまり関係がないと考えられがちですが、広く市民として社会に参画する意識や意欲を学ぶという目的もあります。社会に出ると、会社の一員として時間のほとんどを仕事のために使う時期もあり、それはそれで有意義ですが、地域とのかかわりを持つことで、仕事先とは違う居場所を持つのもまた有意義です。これまで、平塚市、厚木市、大磯町、昭島市などで市民の方も一員となっている審議会に参加してきた経験から、そこで見聞きした地域とのかかわりを紹介したいと思います。

審議会は、長く学識経験者のみで構成されることが多かったのですが、最近は、公募市民の方の参加も一般的になってきています。市民が政策の形成過程に参加し、市民のニーズを政策に反映することを目的としています。参加される方はさまざまです。元公務員や元議員は、その地域の政治、行政に精通しています。元会社員も多く、主に民間企業で培ったコスト意識を行政に反映し、行政活動の効率化を重視されます。「これまでは地域で活動したことはなかったけれど、退職して自由な時間もできたので、地域をよくするために自分の経験が生かせるなら」とお考えです。

私が見た限り、男性は退職後にこうした活動に目を向けることが多いようですが、女性は現役の方が多いです。専業主婦をしながら、子どもの給食をきっかけに消費者活動に参加されたとか、在宅で仕事をしながら、親の介護をきっかけに勉強会に参加されているといった話を聞いてきました。活動されている分野については行政職員以上の問題意識を持ち、解決策を具体的に提言されることに刺激を受けます。

例として厚木市では、夏に市民の参加のもと市の事業を外部の視点で評価する会が開催されています。企業経営者や市民とともに私も委員として参加しています=写真。後方では市民モニターが傍聴しており、市の政策を勉強し、意見を述べられます。厚木市では市民モニターの活動も活発で、希望者が多いため抽選になるのだそうです。

こうした活動を通じて、生活者としての視点と貢献の意欲にいつも感銘を受け、私も仕事の一環で行政にかかわるのと同時に、生活者としての視点も持っていたいと感じます。 市民と行政とのかかわりは、昔は意見を反映することにとどまっていましたが、最近は、行政サービスを直接担うことにも広がっています。「行政と住民の協働の推進」といわれているのがそれにあたります。

公園、公民館、道路脇の花壇、街灯などの管理を住民主体で担い、行政はその支援にとどめ、行政としてはその他深刻化する問題に人的資源や財を集中させるという考え方です。協働の推進に対しては、本来は公務員がやるべきことを市民に押しつけているなどの意見もあります。

しかし、私としては、地域の中で自分たちでできることをやっていくのも大切だし、人生の楽しみや地域の愛着にもつながるのではないかと考えています。

 

いずも・あきこ 1976年広島県生まれ。国際基督教大学大学院行政学研究科博士課程修了。同大学院非常勤講師を経て2008年東海大学政治経済学部専任講師、11年から現職。