特集:研究室おじゃまします!
2016年9月1日号
先端研究と地域の発展を支える
特別編 工学部精密工学科 槌谷 和義 教授

幅広い領域の光学機器を導入 

株式会社ニコンインステックとの協力により8月9日に湘南校舎12号館に誕生した「東海大学イメージング研究センター」。「見ること」に特化し、独創的な研究の創造を目指す世界に先駆けた施設だ。同センターを活用した研究の今後の展望について、設立に携わった槌谷和義教授(工学部)に聞いた。

センターには、細胞を生きたまま観察できる共焦点顕微鏡や、デバイス内を液体が流れる様子をさまざまな倍率で観察する蛍光実体顕微鏡、1辺30センチ重さ50キロ程度の物体まで計測できるX線/CTシステムなど11台の高性能光学機器がそろっている。

「細胞や高分子といった軟らかくて微小な物質から、産業用材料やデバイスなど大きくて硬いものまでさまざまな性質と寸法のサンプルを、高精度かつほぼリアルタイムに観察できる機器が1カ所に集結。幅広い領域の物質を1つの施設で“見る”ことが可能になった」と槌谷教授は話す。

学内で生み出された新たなサンプルをすぐに見ることはもちろん、さまざまな倍率や方法で観察することが可能になったのも大きなメリットだ。

「マイクロ・ナノ研究開発センターでは、新規高分子超薄膜の創成から試用、解析、実用化まですべてに取り組んでいます。研究の過程で生み出されたサンプルを迅速に観察できるようになったことで、創成から観察までのタイムラグがほとんどなくなる。これまで以上に研究の質向上とスピードアップにつながります」

まだ見ぬ世界を観察 新領域の開発にも
今後は専門スタッフが常駐する体制となるほか、株式会社ニコンの社員による講習会も定期的に開催。先端研究に機器を活用するだけでなく、新たな利用法の開発にも共同で取り組んでいく。産学連携で、これまで見ることのできなかった現象の観察に道を開き、今後の製品開発にも役立てる予定だ。

ニコンインステックの関係者は、「最先端の研究領域に取り組んでいる東海大学だからこそパートナーとして意味がある。研究と商品開発の両方を視野に入れた連携は弊社としても初めてだが、未来を志向した産学連携の形として大いに期待している」と語る。

槌谷教授は、「未知の現象を見られるようになれば、不可能といわれていた材料や接着できないとされている材料同士を接合した複合材料を開発できるようになるなど、無限の可能性が広がる。企業の担当者とも密に連絡をとり合い、新たな分野を切り開いていきたい」と意欲的だ。

施設は学内外に開放 地元企業にも貢献
センターは学内の共同利用施設として位置づけられており、今後は一定の講習を受けた人であれば、教員だけでなく学生も利用できるようになる。また、地元企業で開発した新規材料の分析などにも協力していく予定だ。

「17号館に設けられている高度物性評価施設と一体的に運用し、学生の教育や地域産業の活性化にも貢献していきたい。多くの人に利用してもらうことで、新たなネットワークづくりのハブにもなると期待しています」

【もう一つの話題】Tμne学術講演会開催 異分野連携の母体

東海大学イメージング研究センター開設の原動力となったのは、理工系の若手研究者が中心となって2013年に発足した「東海大学マイクロ・ナノ啓発会(Tμne)」だ。

現在マイクロ・ナノ研究開発センター(MNTC)の研究代表を務める喜多理王教授(理学部)ら理学部や工学部の教員が世話人となり、研究室間の連携を図り、理・工・医などの各分野で展開されているマイクロ・ナノサイズ領域における相互理解を深め、独創的な研究を涵養することを目的に活動。年に2回学術講演会を開いている。8月9日に湘南校舎で開催された第7回講演会の運営を担当した岡村陽介准教授(工学部)は、「分野をこえた連携を成功させるためには、日常的に交流し信頼関係を築ける環境が欠かせない。参加者による研究連携はもちろん、学生同士の交流も広がっている」と話す。

Tμneが母体となって生まれたMNTCの交流スペースでも、日常的に学生や研究者、企業の担当者が語り合う姿が見られており、イメージング研究センターもTμneやMNTCでの議論がもとになって生まれた。

9日の第7回学術講演会では、参加者同士が活発に議論。初対面の参加者同士が気軽に意見を交換していた。参加者からは、「研究への新たなアイデアや可能性を見いだすことができた。今後も積極的に参加したい」との声が聞かれた。

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(写真上)「文系・理系を問わず、多くの人に利用してもらいたい」と語る槌谷教授
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