Column:知の架け橋
2016年11月1日号
幸福を考える
情報通信学部組込みソフトウェア工学科 撫中達司 教授

IoTがもたらす「幸福」とは
高輪のスマートゴミ箱から


モノのインターネットIoT(Internet of Things)というキーワードを聞くことが多いが、まだまだ日ごろの生活の中で具体的な形を見ることは少ない。IoTは、すべてのモノがインターネットに接続され、収集されたデータの活用によって新たなサービスが生み出されるということだが、IoTによって私たちの暮らしにどのような変化がもたらされるのであろうか?

インターネットは、第1次、第2次に続く第3次産業革命に大きな影響を与えたといわれている。モノづくりの効率化が進み、生産力がよりいっそう向上し、製品のコストが下がることで、消費者の購入が拡大し経済が大きく発展してきた。その一方で、人々の生活が便利に、豊かになった代償として、環境問題という大きな課題を抱える結果となっている。

IoTがこれまでと異なる価値をもたらすには、人々の生活を便利で豊かにすることだけにとどまらず、再生可能エネルギーなどの利用をより促進し、環境に配慮した循環型社会の実現に寄与するものでなければならないのではないだろうか。安全・安心、使いやすい、低価格などを実現する製造の仕組みに加え、共有により繰り返し利用され、最後にはその形を変えて新たなモノへと循環されていくような社会を築くために、IoTが担う責務は大きい。

このような背景のもと、あまりに小さな一歩ではあるが、高輪キャンパスでは株式会社NSW社の支援を得て、2月よりBigBellyと呼ばれるスマートゴミ箱を国内で初めて設置し、再生可能廃棄物(ビン、缶、ペットボトル)の回収について実証実験を開始している。ゴミ箱でさえIoTになる、その仕組みは簡単だ。ゴミ箱の中のセンサーによってゴミの量を常に測定し、一定量以上ゴミがたまると、「そろそろ回収が必要です」と自らゴミの回収の必要性を知らせてくれる。

ゴミ箱をさらに一歩進めて、ゴミと再生可能な資源とを分別した“資源の回収箱”とすれば、モノの共有や再利用を促進する循環型社会の実現に向けて、重要な役割を担えることになる。

だが、実際に実証実験を進める中でさまざまな問題が見えてきた。その一つに「分別」がある。ビン/缶とペットボトルを対象としているが、これ以外のゴミが15%程度あり、ビン/缶、ペットボトルが正しく分別されていないのが20%を占める。3人に1人は指定された回収方法を守っていないことになる。3分の2の人が正しく分別した中から“異物”を取り出すという分別作業が発生し、これに多くの時間を費やしている。回収されたゴミはリサイクルされ、資源の有効活用につながり、循環型社会の実現に一人ひとりが携わることができるという意識は持ってくれているのだろうか?

「幸せの実現」は、自分のためだけではなく、地球上で生きるすべてのものにある、というのは決して言いすぎではない。ペットボトル1本を回収箱に入れるという行為においても、その意味を考えてほしいと願う。我々の子孫にこの素晴らしい地球を引き継ぐ意識を持ってもらうためにも、スマート回収箱を利用した活動を継続していきたいと考えている。

 

むなか・たつじ 博士(工学)。1986年三菱電機株式会社入社後、ネットワークシステム、短距離無線通信システムなどの開発に従事。2003年静岡大学大学院計算機専攻博士課程修了。15年より現職。


(写真)高輪校舎に設置されているスマートゴミ箱。ペットボトルに異物ゴミが混ざっている