Column:Point Of View
2017年3月1日号
ジャズを聴こう!「酒とバラの日々」
高輪教養教育センター 田丸智也 准教授

ジャズだけでなく、さまざまな軽音楽のアレンジでも有名な「酒とバラの日々」。おしゃれで洗練された名曲ですが、かなりシリアスな内容を扱った映画のサウンドトラックでした。

映画『Days of Wine and Roses』は1962年12月に公開されたアメリカ映画で、監督はブレイク・エドワーズ、音楽はヘンリー・マンシーニが手がけました。前年の『ティファニーで朝食を』もこのコンビによるもので、オードリー・ヘップバーンが歌った「ムーン・リバー」も印象的な楽曲です。

内容は、カップルの出会い、結婚など、前半は恋愛映画の様相なのですが、徐々に、しかも実に自然に、アルコール中毒になっていくストーリー展開で、実在する団体、AA(アルコホーリクス・アノニマス)が制作に協力し、劇中にも登場します。

単に、啓蒙的であるとか、依存症の恐怖を誇張して描く、といった短絡的なものではなく、非常に複雑な人間心理を描いている映画で、音楽もあおるようなものは少なく、ただ淡々と美しい旋律がさまざまなアレンジで繰り返されます。

シリアスなストーリーに対して奇妙なまでに美しい音楽、モノクロの映像は、創造力を大変刺激する映画です。この印象的なメロディーがジャズの多彩な様式でカバーされてきました。

こうした劇中で繰り返される旋律はライトモチーフ(Leitmotiv:独)と呼ばれます。もともとはクラシック音楽のオペラの用語で、主題となる旋律を設定し、それを場面や心情に合わせて変化させる手法のことです。 「酒とバラの日々」は冒頭のオープニングで、水(酒)に揺らめくバラの花の映像とともに提示されます。前半は幸せの象徴として多用され、シリアスさは感じられずコミカルな要素なども出てきます。しかし徐々にアルコールを飲むことが多くなり、やがてライトモチーフは醜悪に変奏された形で提示されるようになります。

映画を見るとき、多くの学生は視覚的な情報に気を取られがちです。しかし、劇中のキャラクターに対し、どのようなメロディーが流れているか意識して見ると、新たな発見があるかもしれません。ダース・ベイダーが出てくるとき、どんな音楽が流れますか?

(筆者は毎号交代します)