特集:教育の現場から
2018年3月1日号
地域と連携した多彩な活動
【To-Collaboプログラム最終報告会】
学生が面白いと思える社会に

2月16日に「2017年度東海大学To-Collaboプログラム最終報告会」が開催された。文部科学省「地(知)の拠点整備事業」に採択された「To-Collaboプログラムによる全国連動型地域連携の提案」が5年間の採択を終えることから実施されたもの。湘南をはじめ高輪、清水、熊本、札幌の各校舎をテレビ会議でつなぎ、学生や教職員、地域住民ら約200人が参加した。

報告会では、初めに現代教養センターの木村英樹所長(前To-Collabo推進室長)がTo-Collaboプログラムの概要などを説明。続いてソーシャル&エコ・マガジン『ソトコト』編集長の指出一正氏が、「ぼくらは地方で幸せを見つける」と題して講演した。

指出氏は、若者たちのローカル・ムーブメントを取材してきた経験から、「都市と地方の二項対立は終わり、日本全国が“地域化”した今、地方や移住という言葉は終わったコンテンツになりました。地域を面白くするのは国の政策ではありません。自分の街を面白くするのは自分以外の何者でもない」と力説。地域を盛り上げるためには複眼的な視点で物事を見ること、“観光以上移住未満”の『関係人口』を増やすことが大切だと説明した。

続いて「若者×地域×未来―若者たちが地域を元気にする―」をテーマに、指出氏と山田清志学長が対談。山田学長が「私たちの世代は、『俺ら東京さ行ぐだ』や『木綿のハンカチーフ』のように、東京に行かなければダメだと頭に刷り込まれています」と話すと、指出氏は、「多くの人が複数の社会を持っている現代では、移動を伴うことが文化になり得なくなり、移動は大英断ではなくなりました」と解説した。

さらに、東京一極集中ではなく、各地で若者が手がけているさまざまな取り組みを紹介し、「いま、地域やまちづくりにかかわっている若い人たちは、『マイパブリック』という言葉を大事にしています。公共の場が楽しくならなければ街が楽しくならない。自分だけが楽しくてもかっこ悪いという考え方です」と話した。

山田学長の「本学は3万人の学生が通う大きな大学ですが、小さなセグメントを重ねていかないとマイパブリックは完成しないでしょう」という問いかけには、「3万人ほどの社会が実はいちばん変えやすい。若い人たちは地域や社会のことを考えていますが、大人がそれを許していないのが現状。学生が面白いと思うことができる社会にしていきたい」と語った。

5年間の成果を報告 今後さらなる発展を

第2部では、To-Collaboプログラムの8事業のうち6事業の代表教員が登壇し、「To-Collaboで育んだ4つの計画8つの事業」をテーマに議論。各事業の5年間を振り返り、成果や今後の課題を報告した。

地域連携センターの池村明生所長は、「5年間で築いてきた基盤を今後いかに生かしていくか、教育プログラムとして落とし込んでいけるかが重要です」と総括。

梶井龍太郎副学長(元To-Collabo推進室長)は、「今後さらに地域の方々と協力しながらみんなでつくり上げていけるように、To-Collaboの関係人口を増やしていきたい」と抱負を語った。

To-Collaboプログラムの4計画8事業

To-Collabo(トコラボ)とは、Tokai univers ity Community linking laboratoryの略称で、日本全国に拠点を有する東海大学の特長を生かした、地域と大学の教育・研究の連携研究所を意味している。東海大が提供できる地域連携テーマとして4計画8事業を掲げ、5年間でさまざまな取り組みを行ってきた。各プロジェクトの目的と主な活動を紹介する。

▶地域デザイン計画 安心安全事業
防災意識を促すことなどを通じて、地域住民の生活の充実を図ることが目的。防災マップの作成や、防災フォーラム、中高生のための災害外傷予防教室の開催のほか、SNSを活用した災害情報共有システムの実証実験、津波避難シミュレーションの開発などを行った。

▶地域デザイン計画ブランド 創造事業
地域資源を活用して価値ある商品やサービスに転換し、地域のブランドを創造することを目標に掲げる。平塚市の地産地消を促す「ベジタマもなか」の開発やレシピコンテスト、タカアシガニを用いた魚醤油の試作、札幌軟石の加工・販売、機能性植物であるヤーコンのお茶やシロップを開発した。

▶ライフステージ・プロデュース計画 大学開放事業
少子高齢化による地域コミュニティーの空洞化や家族レクリエーションの減少などを背景に、多世代交流の促進を目的とし、「南沢ラベンダーまつり」「TOKAIグローカルフェスタ」「望星丸洋上セミナー」「世界一行きたい科学広場in熊本」など幅広いイベントを開催。

▶ライフステージ・プロデュース計画 スポーツ健康事業
大学と行政機関が連携し、地域住民の健康づくりを支援することが目的。総合型地域スポーツクラブ「東海大学健康クラブ」での運動指導や健康データ解析のほか、バスで伊勢原市内各地に出張し、血圧、血管年齢、体組織、骨量を測定する「健康バス測定会」を実施。札幌では自然景観を楽しむウオーキングなどを行った。

▶観光イノベーション計画 地域観光事業
各校舎のある地域の観光資源や観光客の特性に応じた観光事業計画を、自治体や観光協会などと協力して立案・実施することで、それぞれの地域にふさわしい観光推進・地域振興を行うことを目指し、外国人向けのバスツアーや、多言語マップ・看板の制作などに取り組んだ。

▶観光イノベーション計画 文化・芸術事業
文化芸術に関するさまざまな活動を通して、人々の豊かな暮らしの実現と多様な文化を持つ社会の創造が目的。キャンパスに設置されたブロンズ彫刻を活用したワークショップ、公開シンポジウム、「彫刻を触る☆体験ツアー」「TOKAI芸術シニアアカデミー」の開催、収蔵コレクションの公開展示などを行った。

▶エコ・コンシャス計画 エネルギー・ハーベスト事業
東日本大震災をきっかけとして、再生可能エネルギーの導入促進や、省エネ技術の発展に期待や関心が高まっていることから、地域社会と連携して創エネルギー・省エネルギーの啓発および普及のために活動することを目指し、シンポジウムやエコエネルギー教室などを開催した。

▶エコ・コンシャス計画 環境保全事業
過去に実施してきた地域と連携した研究・教育活動の内容を充実させ、対象の幅を広げて地域と連携した取り組みを促進することで、研究活動から教育活動により重点を置き、「共生社会構築に向けた次世代の育成」につなげることを目的に活動。絶滅危機にある動植物保護のための調査や、教育研究機関と連携した環境啓発・環境教育活動を展開した。

 
(写真上)若者の地域とのかかわりなどを語り合った指出氏(右)と山田学長
(写真下)成果や今後の課題を議論