Column:Point Of View
2018年3月1日号
セルフサービスの社会
文学部広報メディア学科 加島卓 准教授

セルフレジを導入するスーパーマーケットが増えてきた。業界団体の「年次統計調査」によると、この3年間でセルフ精算レジ(商品バーコードの読み取りは店員が行い、会計作業は買い物客が行う機種)の導入は急速に進み(平成29年度:48.6パーセント)、その背景には人手不足があるという。

ここでちょっと昔話をすると、かつて小売店は「対面販売」が主流だった。たとえば、買い物客はカウンター越しに欲しいものを伝え、店員が棚やケースから取り出して料金と商品を引き換える。対面販売では、買い物客にどれを渡すのかを店員が選んでいた。

ところがスーパーマーケットが登場してからは、買い物の仕方が変わった。カゴを入り口で受け取り、ショッピングカートで店内を歩き回り、欲しいものを好きなだけ選んでから、レジで精算して自分で袋に詰める。このような「セルフサービス」こそ、現代のスーパーマーケットの特徴である。

ここで生まれる課題の一つは、「レジ待ち」である。どの列に並び、どれくらいでレジを通過できそうなのかは多くの買い物客の関心事であり、これがうまくいかないとストレスを感じてしまう。私たちは、自分のペースで買い物をすませることに強いこだわりを持っている。

セルフレジの導入は、こうした個人の自由の追求に対応している。入り口から出口まで、自分のペースで店内を歩ければ心地よいというわけだ。セルフレジの導入は、スーパーマーケットのセルフサービスを徹底したものだと考えられる。

しかし、「現場」は単純ではない。最新機器の操作に慣れない高齢者には、店員のサポートが必要である。また、セルフレジで楽しそうにバーコード入力する子どもは「渋滞」の原因にも見える。個人のニーズに合わせたセルフレジが、「みんな」を幸せにしているのかは疑わしい。

おそらく、スーパーマーケットには複数の速度がある。さっと買い物をすませたい人もいれば、ゆっくりしたい人もいる。店内が「競技場」のように見える場合もあれば、「公園」のように見えるときもある。
 
セルフサービスの社会は確かに便利かもしれないが、スーパーマーケットは複数の速度に寛容な場所であってほしい。

(筆者は毎号交代します)