Column:知の架け橋
2018年3月1日号
「未来を考える」
工学部機械工学科 村山省己 教授

変わるモノづくりの現場
第4次産業革命を担う人材を


日本の経済はこのところ連続でプラス成長にあり、企業業績も堅調に推移しているといわれています。しかし同時に、深刻な人手不足に直面している企業も多いのが現状です。また生産現場では、設備の老朽化による機械の高齢化が進んでおり、日本が欧米諸国に比べ生産性が低いといわれる要因の一つにあげられています。人の確保と生産性の向上の両立がこれからの社会における大きな課題であり、人財の育成と生産システムを改善していくほかこれを解決する手段はありません。

生産性とはどのようなものなのでしょうか?考えてみましょう。

(公財)日本生産性本部の「労働生産性の国際比較2017年版」によると、1人あたりの付加価値額として算出された日本人の「労働生産性」は、2016年に過去最高の水準になったといわれています。それでも、時間あたりの労働生産性は経済協力開発機構(OECD)加盟諸国の中で20位であり、実質の労働生産性上昇率も過去7年間で22位と先進国の中では低く、1980年代からほぼ同じ水準で推移しています。

モノづくりの現場である生産工場では、かかった費用あたりの付加価値額として算出される「付加価値生産性」が生産性の指標として使われます。この付加価値生産性は、「付加価値額÷総発生費用」で計算されます。付加価値額は売り上げから材料費を引いた付加価値であり、総発生費用は労務費、償却費、経費など発生した費用の総額です。

すなわち、付加価値生産性は、少ない費用でどれだけ高い付加価値を生むことができるかにかかっているのです。この付加価値生産性が高いほど生産工場が筋肉質で、体力のある生産性の高い工場であるといえます。

では、どうすれば生産性を上げることができるのでしょうか?生産性を上げるためには、材料費を抑えることも大事ですが、労務費、償却費や経費を下げることが必要です。

すなわち、少ない人員で安価で維持費のかからない機械・ラインで生産できる工場に変えていくことで生産性を高めていくことができます。省スペースで自動化され生産効率を高めた、すなわち生産性の高い生産ラインが必要となるのです。
 
これが今、インダストリー4.0(第4次産業革命)といわれている、革新的に生産性を向上していくための基本的な考え方になります。生産工場の自動化レベルを引き上げて、いかに生産性を高めていけるかが企業および日本の将来を大きく左右することになります。

私たちは、生産性の高い超小型NC機の設計開発やロボット、IoTを活用した生産ラインの自動化の研究に取り組んでいます。設計から機械の完成・評価までを実現できる環境を有する東海大学で、新たな課題に向けて学生とともにわくわくして研究に取り組んでいます。しかし、新しい研究を前進していくには大学の研究室をこえた活動が必要です。

総合大学としての優れた東海大学のネットワークを生かした産学連携を軸に、企業の多くの方々にもご協力をいただき、研究開発と生産技術の両輪でさらに研究を前進させ、日本の未来に貢献していきたいと考えています。

 
(写真)超小型NC機を使った研究

むらやま・せいき 1953年山口県生まれ。東海大学工学部生産機械工学科卒業。(株)アマダ、厚木自動車部品(株)(現・日立オートモティブシステムズ(株))を経て2016年から現職。国家技能検定試験首席検定委員を経験。専門は設計工学、機械工学、自動化システム、生産技術。日本設計工学会、日本機械学会、精密工学会等に所属。著書に『グローバル自動化ラインの基礎知識』(日刊工業新聞社/2018年1月発行)。