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特集

2011/04/01
教育の現場から
話題の授業や地域・企業と連携した課外活動など、東海大学の特色ある教育現場に迫ります。

阿蘇校舎で3大学連携実習

大学の枠を超え相互に学ぶ 特色を生かして広がる教育

東海大学、宮崎大学、南九州大学が連携して、3月2日から4日まで2泊3日で「適正家畜生産規範学実習」を実施した。3大学から有志学生31人が参加して農学部のある阿蘇校舎と近隣施設での見学や実習などを行い、畜産についての知識を深めた。※学年・職位などは実習当時

「食卓を安全で安心な食材で彩り続けるためには、自然と調和して動物を適切に育て、加工し、正しく流通させる必要があります。各大学の得意分野を生かして相互に補うことで、農場から食卓まですべてを見渡せる人材を育成していきたい」と岡本智伸教授(東海大農学部)は語る。今回の実習は、3大学連携で取り組んでいる平成21年度文部科学省戦略的大学連携支援プログラム「畜産基地を基盤とした大学間連携による家畜生産に関する実践型統合教育プログラム開発」(畜産GP)の一環として行われたもの。

優良な農業規範を踏まえた次世代の畜産を担う高度専門技術者を育成するため、採択最終年度となる2011年度末までに具体的な教育プログラムの形成を目指している。各大学の教員や外部講師によるセミナーなど、5つの共通科目を試験的に合同開講しており、今回の実習もその一つだ=図参照。昨年3月には宮崎大で超音波など先進的技術を使った肉質判定や牛の繁殖を、12月には南九大で食品加工や衛生管理についての実習を行っており、東海大では今回が初めての実施となった。

“五感で感じる”現場で学ぶ大切さ実感
昨年は口こう蹄てい疫えきの影響などでインターンシップを実施できなかった。その代替案として、1日目はサントリー九州熊本工場と農業・食品産業技術総合研究機構の九州沖縄農業研究センター内の畜舎などを見学した。

実習初日となった2日目と翌3日目は、いずれも午前7時過ぎから農学教育実習場で講義を開始。家畜の飼育管理として搾乳や羊の毛刈りを体験したほか、放牧地にトラップと自動撮影カメラを設置して、野生動物の調査なども行った。「将来、小学校の栄養教諭になりたい」という南九大の宮原美香さん(健康栄養学部3年)は、「普段から食育の勉強はしているけれど、実習はほとんどない。子どもたちに牛乳がいかに大切かを伝えるために、自分の五感で感じられたことは大きい」と話す。

指導にあたった実習場の技術職員に質問する学生も多く、宮崎大の西村隆慈さん(農学部獣医学科5年)は、「教科書に重要と書かれているところだけが大切だとは限らないと感じた。口蹄疫についても教科書だと1ページぐらいだけれど、現場は違う。生の声を聞けて勉強になった」と言う。このほかにも、農学部のプラダン・ラジブ准教授による自給飼料についての説明や数値測定、伊藤秀一講師によるアニマルウェルフェアの講義など、阿蘇校舎のフィールドと研究を生かしたプログラムが展開された。

教育プログラムとしてさらなる発展を
宮崎大農学部の石田孝史准教授は「畜産GPで連携したことで、阿蘇の赤牛に触れたり加工を体験したり、今までは講義の中で説明するだけだったことを体験できるようになった。教育の幅が大きく広がった」と話す。南九大での実習にも参加した東海大の高橋智保さん(農学部3年)は、「各分野に特化した先生に教わると、興味のなかった分野にも関心が持てるようになる。自身の研究内容を考えるためにもいい機会。他大学の学生と交流することも少ないので、参加してよかった」と語った。

11年度も実習やセミナーを継続しながら教育プログラムをまとめ、12年度から本格的に展開していく予定だ。「将来的には、このプログラムを体験した学生が社会に出たときの声もフィードバックできたら面白い」と南九大健康栄養学部の竹之山愼一准教授。3大学が連携した取り組みは、今後さらなる充実を図っていく。


農学教育実習場~広大なフィールドで実践的な授業

東海大学農学部農学教育実習場(椛田聖孝場長・農学部教授)は農学部のある阿蘇校舎の北東側に位置する。広さは約40万平方メートルを誇り、牛舎や放牧場、農産加工場、田畑など豊富な施設が並ぶ。10人の技術職員が常駐し、原材料の生産から加工までできる。研究室ごとの果樹園や田畑もあり、学生や教職員の研究や各学科の授業、サークル活動などにも広く活用されている。

毎年10月には、2年生が「農場実習」の一環で栽培した米を実家に送る恒例行事も実施。11月の建学祭では農産加工品の販売のほか、来場者自らが畑から野菜を収穫する量り売りも行われており、地域住民からも好評を得ている。農産加工場は外部からの要望にも応え、講習会や共同での商品開発も盛んだ。技術職員の服部法文さんは、「これだけ充実した実習場が校舎内にある大学はほかにありません。実践的に学ぶことで、机の上では浮かばない考えも浮かぶ。ここでの学びを研究や就職など、将来設計に生かしてほしい」と語っている。

 
(写真上)口蹄疫などの影響もあり、学生は防護服を着て作業。羊の毛刈りを体験した学生たちは「加減が分からず難しかった」「目で見るのとやってみるのとでは全く違う」と口々に話していた
(写真下)普段から実習を体験している東海大の学生が、他大学の学生に教える場面も目立った

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