特集:キャンパス展望
2011年4月1日号
持続可能な社会をつくる「環境人材」とは?
教養学部人間環境学科自然環境課程 岩本 泰講師

はじめに、3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震で被災した方々に対し、心よりお見舞いの気持ちをお伝えしたい。

近年の世界経済不況に加えて、未曾有の災害発生で混沌とする情勢の中、これから社会で必要とされる人材とはどんな人材だろうか。そこで本稿では「環境人材」について取り上げたい。この概念については、2002年のヨハネスブルクサミットで日本が「持続可能な開発のための教育(ESD)の10年」(2005〜14年)を提案したことに起因する。その後、実施計画の策定にあたり、高等教育機関における人材育成について議論を重ね、環境省は「持続可能なアジアに向けた大学における環境人材育成ビジョン」を策定した。

そして、喫緊の課題である「持続可能な社会」づくりを進めていくために必要な人材育成を目的とした「アジア環境人材イニシアティブ(ELIAS)」の一環として、産学官民連携の「環境人材育成コンソーシアム」設立準備会が09年に発足、今年正式にスタートする。こうした流れの中で提起された概念である。「環境人材」には求められる3大要素として持続可能な社会づくりへの「強い意欲」「専門性」「リーダーシップ」が掲げられている。そして「T字型」人材(または「π字型」)として、各学部の専門性(縦棒)、自らの専門性と環境分野とのつながりの理解(縦棒と横棒の接合部)、そして環境や持続可能性(Sustainability)についての分野横断的な知見と鳥ちょう瞰かん力(横棒)などの能力を兼ね備えた人材育成が大学に求められている。

このコンソーシアム主催の勉強会にて某大手企業の人事担当者が発表した必要な人材像は、従来の大学教育で力を入れてきた偏狭的縦棒能力よりも、広い視野を兼ね備えた横棒(鳥瞰性・俯ふ瞰かん性)と高いコミュニケーション能力・プレゼンテーション能力を持った者、ということであった。環境分野のみを専門とする大学学部や学科が乱立する中で、東海大学は「建学の精神」として、もともと文理融合で幅広い視野をもった人材育成に取り組んできた。中でも、教養学部はまさに鳥瞰力育成の学部である。

私が所属する人間環境学科自然環境課程は、座学だけでなく多彩な体験学習形式の授業が多く開講されている。実体験に基づく主張というのは、それなりの説得力を持つ。なぜなら、とりわけ環境に関するさまざまな諸問題は、地域や社会の状況に埋め込まれていることが多く、発信力としての「知」は教科書的な活字に表現できるものばかりとは限らないからである。我々教員も学生と同じ体験を共有し、学びの成果を必ずフィードバックして発表の機会を持つ。その経験の積み重ねが豊かな人間性を育むのである。 

さらに、教養学部全体としてもSOHUМプロジェクトが09年より文科省のGPプログラムとしてスタートした。持続可能な社会をつくるには、まずは持続可能な地域づくりを考えることが学びの第一歩である。そこで教養学部の地元である秦野市と連携した「秦野の森の物語」プロジェクトを立ち上げた。本プロジェクトは、地域環境の自然と文化の多様性を学生主体で考え、その成果を総合芸術の手法を用いて表現活動にトライすることが目的である。当然「環境人材」育成のあり方について、他大学にはまねできない教養学部としての実践を検討したものだ。今後このプロジェクトを「グローカル」に学生と協働的に醸成させていくことが、私のライフワークでもある。

 

いわもと・ゆたか 1970年神奈川県生まれ。東京学芸大学大学院連合学校教育学研究科学校教育学専攻修了。博士(教育学)。専門は、環境教育・ESD(Educationfor Sustainable Development)・開発教育。