Column:知の架け橋
2019年6月1日号
「AI」を考える
基盤工学部電気電子情報工学科 佐松崇史 教授

あいまいな情報を理解できる
“人にやさしいAI”とは?


人工知能(AI)との出会いは35年前、たまたま手に取った脳科学の本であり、文字認識をするニューラルネットワークがAIの1つとして紹介されていた。
 
人の神経細胞をモデル化した構成で、例題と答えのセットを入力し、もし答えが間違っていた場合、それぞれの結合部の“重み”を変更することで学習を行う(機械学習)。データの組み合わせを複数用意するだけで学習を行うので、いろいろな作業や処理が自動化し簡略化されるのでは、という期待感から当時大きなブームとなっていた。
 
その後、データ不足や計算機の性能の問題などで一般的にはいったん下火になったが、新しい学習手法の提案(ディープラーニング)、ビッグデータの利用、コンピュータの性能向上などの理由から、ネットワークの大規模化が可能となったことで、これまでできなかったような難しい問題にも対応できるようになり、昨今のブームとなっている。
 

これらとは別の考えとして、インターネット上にはすでに多くのノウハウが保存され、また各種専門家もネットワークで接続されていると考えると、インターネットそのものが知の集合体であり、AIであるともいえる。人間同士の会話で、たとえば「パソコンは何を買ったらいい? 

レポートやプログラムが書けて、あまり重くなくて画面が大きいのがほしい」と聞かれたら、「あまり」「大きい」などのあいまいな情報を人は理解し、知識があれば提案できる。
 
あいまい情報を数値化する手法としてファジィ理論があり、人とコンピュータとの言語によるインターフェースとして利用することで、AIの普及段階での活用が期待される。私の研究室では、“人にやさしいAI”の開発を目指し、人間同士のやりとりのように、目的の情報にたどり着くファジィ検索システムの開発を行っている。
 
さて、今後のAIについて考えると、たとえばgoogleは、AI用のきれいなデータ分類やネットワークの構成作業にもAIを導入し、データサイエンティストが数カ月かけて処理していた作業を1日にできる技術を開発済みである。大きなブレークスルーがなくても、また、いったん注目度が下がっても、さまざまな分野での自動化・効率化の主力として普及していくと予想される。
 
日常生活では人の業務のマニュアル化が進んでおり、その分野は将来AIに切り替えられそうである。人の創作物の中に、本当にゼロから作ったものがあるのか。先人の作品から学び、何らかの影響があることを考えると案外独自性は少ないのかもしれない。 

仕事の内容が大きく変わる時代であるので、これから社会に出ていく学生は、変化に対して自ら学び対応する力や、AIに負けない創造力を在学中に獲得してほしい。

 
(写真)研究室で開発した自動車購入支援システム。たとえば「丸くて小さい車」をメニューで選ぶと候補を提示し、さらに脳の自己組織化を模倣した手法で車種を仕分けして候補をマップで提示する。今後は「かわいい」「かっこいい」など、より難易度の高い言葉への対応を目指している


さまつ・たかし 1968年熊本県生まれ。熊本大学工学部卒業。九州工業大学大学院情報工学研究科情報科学専攻単位取得満期退学。博士(情報工学)。専門は知的情報処理、ソフトコンピューティング。