News:学生
2019年12月1日号
世界と戦い堂々のBWSC準優勝
【ライトパワープロジェクト・ソーラーカーチーム】
オーストラリア縦断3000キロ
厳しい条件に負けず好走


太陽光の力だけで約3000キロ先のゴールを目指す―チャレンジセンター「ライトパワープロジェクト」のソーラーカーチームが、10月13日から20日までオーストラリアで開催された世界最大級のソーラーカー大会「ブリヂストン・ワールド・ソーラー・チャレンジ2019」(BWSC)で準優勝した=本紙11月1日号に既報。過去2回の優勝を誇るチームは、今大会に向けて開発した新型マシン2019年型「Tokai Challenger」で強風などの厳しい環境を乗り越え、世界の強豪チームを相手に好走を見せた。

「トップチームはほぼすべて、人工衛星などに用いられ発電効率の高い多接合化合物太陽電池を搭載している。また、前回大会で東海大が採用した単胴型(モノハル型)のデザインも増えており、厳しい戦いになることが予想される」
 
大会前、佐川耕平総監督(工学部助教)と木村英樹監督(同教授)ら指導陣は、チームが置かれた状況を冷静に分析していた。東海大が採用した家庭用にも使われるシリコン系太陽電池は、発電効率では劣るため面積は4平方メートルと広く車体に貼りつけることができるが、その分車体は大きくなる。一方、多接合化合物の面積は2・67平方メートルと制限されるが、そのサイズを生かしてマシンそのものを小さく作ることができる。

限られたエネルギーで走行するソーラーカーでは、小さく軽い車体が有利。加えてモノハル型車体の増加で、17年の前回大会4位の成績を残したアドバンテージも少なくなった、というのがチームの見立てだった。

「しかし、17年型マシンでは我々のやりたいことをすべて出しきったとはいえませんでした。シリコン+モノハルの可能性を追求したかった」と佐川総監督。チームではマシン開発にあたって、空力が専門の福田紘大監督(同准教授)や設計リーダーの福田純一郎さん(大学院工学研究科1年)らを中心にデザインと解析を進め、マシン内部への空気の流入を抑えるとともに、横風に強いという特性を強化。さらに東レ製の最新炭素繊維を用いたことで大幅な軽量化を実現したほか、ブリヂストン製のソーラーカー専タイヤで転がり性能もアップしたことで、狎こΔ叛錣┐襯泪轡〞に仕上げてきた。

チームの雰囲気も向上 高い技術力を証明

「今年は『自らマシンに触れよう』というメンバーが多いこともあり、仕上がりが早い」。例年、ダーウィンに入ってからも整備作業が深夜まで及ぶことが多かった。しかし今大会では、2大会連続で学生リーダーを務めた武藤創さん(工学部4年)を中心にメンバーの積極性が高まり、学生ドライバーも務める小野田樹晃さん(同3年)や伊坪岳陽さん(同2年)らメカニックの作業スピードも向上。「順調に大会へと臨めた」とメンバーの誰もが口をそろえた。

大会中も課題が出れば、連日のミーティングで確認し、すぐに対応。4年生や大学院生の大会経験者と、1、2年生ら“若手”が融合し、完成度の高いマシンと相まって、他チームがトラブルに襲われる中でも順調に順位を上げていった。

木村監督は、「厳しい環境に加えて、世界の強豪と相対するこの大会は常に高い緊張感が求められる。学生たちはチャレンジを続け、大きく成長してくれた」とたたえる。「準優勝はチームが高い技術力を持っていることの証明。次回はどのような体制で臨むのか検討していきますが、上位を狙っていきたい」と佐川総監督はさらに先を見据えている。

【スタート地点 ダーウィン】
10月2日にBWSCのスタート地点・ダーウィンに集合したチームは、整備やテストを行い7日からの公式車検に臨む=写真。安全性など綿密なチェックを受けるも無事に合格。12日の予選では2分7秒3のタイムで6番手に入った。

【Day1 ダーウィン〜605キロ地点】
13日にダーウィンを6番手でスタートしたチームは、市街地で先行チームをとらえたものの後続に抜かれ8番手で第1CP・キャサリンに到着。再出発するとトラブルで停車していた工学院大学を抜き7番手に。第2CP・デイリーウォーターズにはそのまま7番手で入り、午後5時のレース終了時間にはスタートから605キロ地点まで到達した。

【Day2 605キロ地点〜1327キロ地点】
スタートから快走し、ドイツ・アーヘン工科大学などのチーム・ゾーネンワーゲン・アーヘンを抜き6番手で第3CP・テナントクリークへ。その後は、オランダのトップ・ダッチ・ソーラー・チーム、アメリカのミシガン大学を抜いて4番手に浮上する。その後はアーヘンに再逆転を許すも僅差で第4CP・バロウクリークに到着。ここでミシガン大に先着を許し6番手となった。しかし、再スタート時にミシガン大をかわして5番手となり、1327キロ地点でこの日のレースを終えた。

【Day3 1327キロ地点〜2025キロ地点】
出発直後にミシガン大が先行し、6番手で第5CP・アリススプリングスへ。しかし、2分先に再スタートしたミシガン大を再び逆転。じわじわと差を広げて第6CP・カルゲラに到着する。再スタート直後にノーザンテリトリー州と南オーストラリア州の境を越えると=写真、横風が強まる中でも順調に走行。終了時間には2025キロ地点まで達し、メンバーたちは強風の中でキャンプを張り翌日に備えた。

【Day4 2025キロ地点〜第9CP・ポートオーガスタ】
強風が吹く中もチームは慎重に走行。途中、約2150キロ地点でアーヘンが横風でコースアウトしたためチームは4番手となる。さらに初日からトップを走っていたオランダのトゥエンテ大学も強風にあおられコースアウトしたため3番手まで浮上し、そのまま第7CP・クーバーペディに到着した。大会側が相次ぐトラブルを受けて時速80キロの速度制限をかける中、チームは順調に走行を続けて第8CP・グレンダンボへと到達する。さらに前を追ったチームは、午後5時から9分のオーバータイムを使い、第9CP・ポートオーガスタに到着して=写真=この日を終えた。

【Day5 ポートオーガスタ〜ゴール・アデレード】
前日のオーバータイム分9分が経過した後にレースをスタートさせたチームは、すぐにポートオーガスタでの義務停車30分を消化。前を行くベルギーのアゴリア・ソーラー・チームとオランダ・デルフト工科大学のヴァッテンフォール・ソーラー・チームを追う。そんな中、ゴールまで残り約250キロ地点でヴァッテンフォールがバッテリーのトラブルでリタイア。2番手となったチームは、時速も110キロまで上げてラストスパートをかける。最後はアゴリアに11分18秒差まで迫るも、準優勝でゴール・アデレードに到達。3022キロにわたる長丁場の大会を終えた。

【表彰式】
10月20日にはアデレード市内でのパレード走行と表彰式が行われた。式にはチームメンバーと日本から駆けつけた現代教養センターの成川忠之所長が出席。準優勝のトロフィーが授与されると、メンバーを代表して学生リーダーの武藤さんが「車体の性能を高めることで2番手という結果を残すことができた」とスピーチした。


プレス向け参戦報告 挑戦の経過を語る

ソーラーカーチームは帰国後の10月31日、代々木校舎で、BWSC準優勝のプレス向け参戦報告会を開催した。新聞社や専門誌の記者ら多数が参加。東海大から梶井龍太郎副学長をはじめ、佐川総監督、学生メンバーが出席。チームのメーンスポンサーである東レから複合材料事業本部トレカ事業部門産業材料事業部産業材料販売第一課長の井上将人氏、大会タイトルスポンサーのブリヂストンからブランド戦略コミュニケーション本部主任部員の牛窪寿夫氏が登壇した。

梶井副学長は、「今大会はあと一歩で優勝という素晴らしい成績を残してくれた。日本の技術力の結晶ではないか」と述べ、佐川総監督と武藤さんが大会の報告に立ち、BWSCの概要や今大会のライバルチーム、成績などについて紹介した。

武藤さんは、「大会を通じて、学生として貴重な経験を積むことができました。2大会連続でチームリーダーを務めましたが、チームの雰囲気がとてもよく、それが好成績につながったと感じています」と振り返っていた。

日本から気象情報を送り チームを側面からサポート

東海大ソーラーカーチームが世界の強豪チームと互角以上の戦いを見せたその陰には、日本から送られてくる気象情報のサポートがあった。

毎回、チームを支援している高輪校舎の情報技術センター(TRIC)は、気象衛星ひまわり8号が観測したオーストラリア周辺の画像を、気象庁からインターネット経由で受信。コース上では通信環境に制限があるためTRICが画像を地域ごとに分割するなど画像をスムーズに伝送するよう工夫してチームに通信衛星経由で配信した。チーム側では指令車で作戦を練る木村監督や清水祐輝さん(大学院工学研究科1年)らが、走行ペースの決定などに役立てた。

また、情報理工学部の中島孝教授が研究代表を務め、理学部の山本義郎教授、山本研究室に所属する大学院総合理工学研究科2年の今田一希さんらが参画するチームTEEDDA(国立研究開発法人科学技術振興機構・平成24、27年度CREST採択事業)でも、気象情報サポートを実施。人工衛星から得られる画像などのデータをもとに日射量を中心とした気象情報を分析。衛星画像に写る雲の位置や通過予定時間などから1平方メートルあたりの日射量を解析して数値化し、アニメーションや文章などに加工してチームへと伝えた。

TRICの長幸平所長は、「衛星情報を最大限に活用し、上位に食い込んでくれました」とコメント。山本教授は、「『総合力の東海大』に加わることができ、非常にうれしい」と語った。

 
(写真上から)
▼荒野を駆ける19年型「Tokai Challenger」
▼準優勝でゴール・アデレードに到着
▼佐川総監督と武藤さんがBWSCでの戦いを報告
▼ひまわり8号の画像をTRICで加工しチームに送った
▼湘南校舎18号館からチームをサポートした山本教授(右)と今田さん
Key word ブリヂストン・ワールド・ソーラー・チャレンジ
オーストラリア北端のダーウィンから南部のアデレードまで、約3000キロの公道を舞台として2年に1度開催される世界最高峰のソーラーカー大会。1987年に第1回大会が開催され、今回で15回目を迎えた。世界21の国と地域から、メーンとなるチャレンジャークラスの27チームをはじめ、実用化を目指すクルーザークラス、旧式のレギュレーションに沿ったアドベンチャークラスの3カテゴリーに計43チームがエントリーした。