Column:知の架け橋
2011年7月1日号
「食を語る」
馬渕 悟 教授 国際文化学部地域創造学科

食を通じて国際交流を
北海道の食文化をアジアに伝える


私は2004年以降、北海道物産の海外輸出促進に取り組んでいる。たまたまゼミに入ってきた学生のお父上が台湾の人で、台湾でスーパーマーケットのチェーンを展開しているというので、北海道物産を買ってもらえないかと提案したのがきっかけである。

海外へ食品などを輸出する場合、「北海道物産展」のような名目で、一過性の物産販売・宣伝を行うのが普通だが、私は専門が文化人類学なので「食文化を輸出」することしか考えられなかった。そのための仕掛けとして、いろいろなことをやった。台湾では雪が降らないから北海道の雪をコンテナで送り、店頭で雪祭りを開催したり、スーパー付属のレストランのシェフを集めて北海道物産を使った料理教室、スーパーの顧客や社員の北海道の生産地視察などを展開した。要するに、台湾の消費者に北海道の食文化を伝えたのである。

その一方で、初年度だけで110人の北海道の生産者に、台湾の販売現場を視察してもらった。北海道の生産者に台湾の食文化を理解してもらったのである。台湾のガスコンロには魚焼き用のグリルが付いていない。魚焼き網も売っていない。そんな地域にホッケの開きを持っていっても仕方がない。コンブは食べるものという台湾に、高級な出汁コンブを持っていっても相手は???である。唐辛子の辛さは好むが、塩の辛さは苦手である、などなど。そして何よりも「医食同源」が台湾の食文化の基本であることから、それぞれの食品の健康への効果を説明することを心がけた。このように相手の食文化を理解すれば、何が売れるかが分かってくる。

失敗も多々あったが、試行錯誤を繰り返しながら、米、野菜、果物、日本酒やワインなどの北海道物産が日常販売商品としてスーパーの店頭に並ぶようになり、今後はさらにデパートなどにも拡大する予定である。昨年からは韓国を対象に加えた。韓国のキムチや発酵食品の技術と北海道の安心・安全な食材をコラボレーションさせて、新しいブランドを作ろうというプロジェクトである。すでに、韓国と北海道でシンポジウムを開催し、産学官が協同した具体的な話が進んでいる。

私は、先にも書いたが文化人類学が専門なので、このようなプロジェクトを通じて物産を動かすことを目的としていない。もっとも身近で、誰もが興味を持つ「食」をキーワードに相互理解を深めることが、双方にとってプラスとなる交流に結びつくと考えている。来年度からは、いよいよ大物の中国をターゲットとする予定である。

 
(写真上)台湾の雪祭りでは、札幌スープカレーの試食販売を行った
(写真下)台湾で開かれた旭川物産展には、ゼミの学生も参加した

まぶち・さとる 国際文化学部学部長。1948年長崎県生まれ。慶應大学文学部社会学科卒業。東京都立大学大学院社会学研究科社会人類学専攻修了。修士(文学)。専門は文化人類学、国際物流など。主な著書に『効果的なサプライチェーン実現のための社会資本整備』などがある