Column:本棚の一冊
2011年8月1日号
『われ笑う、ゆえにわれあり』


われ笑う、ゆえにわれあり
情報理工学部情報科学科 尾関智子 教授


読書感想文や国語のテストなど、「国語」という苦手科目から解放されるようになってから、たくさんの本を読むようになった。好きな本を、好きなように読む楽しさを知ったのは大学生になってから。泣きたい気分の時は思いきり泣ける小説を読み、疲れている時は笑えるエッセイを読む。今回は笑える本、『われ笑う、ゆえにわれあり』を紹介したい。

笑える本を探していたところ、さくらももこの対談を読んで著者に興味を持った。しばらく本書を読み進めると、大学時代のあの「哲学」の講義風景がよみがえってきた。小さいころから、よくしゃべる子だった。母が「お前が寝るとほっとし、起きてくるとぞっとした」というほどである。「なぜ物には色があるの?」などと朝から晩まで質問攻めにしていたらしい。成長するにつれ「お前の屁理屈にはかなわない」と言われるようになり、屁理屈なら誰にも負けないと自負するようになった。世間知らずな私は、大学の哲学の講義で吉田夏彦先生と出会い、「私より屁理屈な人がいる」と衝撃を受けた。先生の質問攻めにぐったりし、やっと母の気持ちが分かった。

著者によると「本書は、笑っていただくことを目的にしている。もちろん笑いの中から哲学的洞察や金もうけの方法などを読み取っていただくのは大歓迎である。読み取れた場合には私に教えてもらえれば幸いである」とのことである。禁煙、大学の助手との対話、愛、人間の定義、女性への賛美などのさまざまなテーマについて哲学的考察(?)がなされているが、何も難しいものではない。ただただ、笑えるのである。

さらには、「人気教授になる方法」なる魅力的なタイトルもあり、ある時読み返してみたが、どうすれば人気教授になれるかは分からなかった。しかし、予想もしない論理展開にはいつも驚かされ、次はどんな風に煙に巻かれるのかとわくわくする。しばらく読んでいると頭が疲れて意識を失ってしまう。悩むことがばからしくなることさえある。

著者の作品は「非常に面白い」という人と「全然面白くない」という人に分かれるらしい。ぜひ一冊買ってみることをお勧めする。全く面白くないという人も、鍋敷きや睡眠薬代わりに使えるか、古本屋に売れるはずである(著者談)。

『われ笑う、ゆえにわれあり』
土屋賢二著
文春文庫

 
おぜき・ともこ
1967年東京都生まれ。東京工業大学理学部物理学科卒業。同大学院理工学研究科物理学専攻修了。専門は機械学習。