Column:本棚の一冊
2011年9月1日号
『クルーグマン教授の経済入門』


私の人生を変えた本
政治経済学部経済学科 布田功治 講師


皆さんは、ポール・クルーグマン教授を知っているでしょうか?クルーグマン教授はノーベル経済学賞を受賞されたことのある著名な国際経済学者であり、アメリカで政策アドバイザーとしても活躍している先生です。クルーグマン教授は、アカデミックな論文のみならずユーモアに富んだ一般書も多数執筆しています。その中から、私の人生を大きく変えた『クルーグマン教授の経済入門』を紹介します。

私は大学時代に合気道部の主将をしており、勉強そっちのけで合気道ざんまいの日々を過ごしていました。例えば、11時に起床して道場へ向かい、12〜15時と17〜21時の間ずっとけいこをして、そのあと23時ごろまで部室で飲み会をして寝るといった具合でした。

当然、成績は非常に悪く、あるとき大いに反省することがありました。そこで、せっかく経済学部に所属しているのだから、経済を勉強してみようと思い立ちました。ただし、そのころの講義の多くは分かりにくく、自分の不勉強も相まってさっぱり理解できません。まずは経済を全体的にとらえる取っ付きやすい本はないかなぁと探してみました。そうして出会ったのが、『クルーグマン教授の経済入門』です。

この本を読んだときの感動は、今でも忘れられません。この本では「失われた10年」から日本経済が抜け出せない理由や国際的な金融危機などについて、数学を使わないながらも経済学的見地から論理的に解説しており、当時の私でも分かりやすい内容でした。そして最も印象深かったのは、「世界的な大企業の社長やアメリカの大統領であっても、経済学を理解していないならば世界経済の動きの本質を読み解くことはできない」という趣旨の文章でした。

そこから私は合気道部にかけるのと同じくらいの情熱を持って、経済学の勉強に本格的に取り組みました。すると、次第にこの本を読んだときの感動を自分も与える側になりたいと考えるようになり、その思いがかなって東海大学政治経済学部経済学科に着任することになりました。

世界経済の動きの本質を読み解くってどういうことだろう? と興味を持たれた方は、ぜひこの本を手に取ってみて下さい。読めば新しい世界が必ず開ける、そんな素敵な本です。

『クルーグマン教授の経済入門』
ポール・クルーグマン著
山形浩生訳
ちくま学芸文庫

 
ふだ・こうじ 1977年宮城県生まれ。東京大学経済学部卒業、東京大学大学院経済学研究科現代経済専攻博士課程修了。博士(経済学)。専門は国際金融論。