Column:知の架け橋
2010年12月1日号
「環境問題を語る」
芸術工学部建築・環境デザイン学科 田川正毅教授

こども環境から街を見る
将来を見据えて議論しよう



小さいころどのような遊びを経験してきたか、世代によってその答えは随分と異なるはずです。私はどちらかというと内向きの性格でしたが、それでも晴れた日は夕暮れまで道端や秘密の道で遊んだり、雪国だから冬はグループを作って戦争ごっこ(雪合戦)に興じていました。身の回りの空間を遊び場とし、その場にあるものを工夫し、群れて遊ぶことができました。今日では、このような子どもの遊び方はほとんど失われてしまったのではないでしょうか。全国的な子どもの遊びの調査でも、都市部・農村部にかかわらず遊びの脆弱化が顕著になっていることが示されており、札幌市の小学生を対象にした経年調査でも、冬の外遊びが著しく減少しています。

よく言われることですが、遊びの「時間」・「空間」・「仲間」の犹梓(さんま)〞の減少により、やんちゃで自由な子どもの遊びは崩壊寸前と言ってよいでしょう。そして自由な遊び方を知らない世代が、すでに親や保育者の多くを占めるようになり、遊びの不自由さは犯罪や交通事故と隣り合わせの世の中でさらに加速されています。遊び空間のあり方は都市計画や住宅地の作りと密接に関係しており、これらにかかわる都市計画家や建築家の責任も重いと言えます。そうした場の計画は子どもの行動範囲や居場所に大きく影響し、犯罪や交通事故の発生率とも関係しています。都市や地域の環境を経済や利便性という物差しだけではなく、子どもにとっての環境という視点でレビューすることが必要です。そのような環境の質の向上は子どもの未来のためばかりではなく、急増する高齢者に優しく楽しい街をつくることや、人々にとってストレスの少ない環境形成にもつながります。

地球環境の諸問題に比べると、犹劼匹發鮗茲蟯く環境〞はやや狭い範囲の環境の取り上げ方と思われるかもしれません。しかし地球環境がなぜ大切かと言えば、人がこの地球で多くの生き物とともに末永く健やかに暮らせるため、とも言えるでしょう。次代を担う今の子どもは当然のこと、幾世代か先の子どもたちにとって何が大切かという倫理観をもってさまざまな環境問題を見定めたいものです。

私の学位論文の主題は都市開発における環境影響の評価プロセスでしたが、私の知る限り日本にあっても欧米の環境アセスメントや環境レビューにおいても、子どもとかかわる環境へのインパクト(打撃・悪影響など)を考慮するという手立てがありません。しかし都市開発の多くが、その影で子どもの遊びの豊かさや自由を破壊してきたことを思うと残念なことです。子どもにとっての環境の質という視点で地域や都市を見直すことは、実は環境に対する市民・行政・企業の倫理観をその本質から生活者の目で検証することになるのです。

 

たがわ・せいき 1966年北海道生まれ。北海道大学大学院修士課程修了。博士(工学)。こども環境学会認定こども環境アドバイザー。専門は建築、インテリア、ランドスケープ。



※「環境問題を語る」は今号で終了します。来年4月号から「知の架け橋」の新テーマをスタートする予定です