特集:東海大生200人に聞きました
2011年11月1日号
読書の楽しみを広げよう
約8割が「本を読んでいる」が─

「良き書物を読むことは、過去の優れた人々と会話を交わすようなものである」と説いたのは、17世紀に活躍したフランスの哲学者・デカルト。電子書籍や本のネット販売など、時代は変わっても読書の楽しみは変わらないはずだと思いたいが、果たして東海大生の実態は? 学生200人に1カ月の読書量や好きなジャンルなどを聞いた。

「1カ月に何冊ぐらいの本を読みますか?」と質問したところ、約8割が「1冊以上は読んでいる」と回答。最も多かったのは「2〜5冊」で42%。中には、「20冊以上」(6%)と回答したつわものもいる。

映画やゲーム、インターネットなど多様な楽しみがある中で、多くの学生が本に親しむ時間を持っているのは一安心……と言いたいところだが、実は今回のアンケートではマンガや雑誌も「本」として扱っている。そのため、「どんな種類の本を読むことが多いですか」との問いで圧倒的に多かったのが、「マンガ」108人。これに「新書・文庫・ノベル」98人、「雑誌」92人と続く。「文学・思想などの文芸書」と答えた学生も66人いるが、大半の学生はさらりと読める手軽な「本」を好む傾向があることが分かる。

また、本を選ぶときのポイントとして多かったのが、「作家や書名」106人。続いて、「ベストセラーや話題の本」57人、「友人や親の紹介」56人との結果に。アンケートでは「本をほとんど読まない」と答えた学生が17%いるが、「良き書物」との出合いは一冊の本を手に取ることから始まる。「テレビドラマになった東川篤哉さんの『謎解きはディナーのあとで』は、活字が苦手な私でもさくさく読めた」(工学部3年・女子)というように、話題の本やドラマ化された本から読み始めるのも一案だ。(構成・編集部)


多様な好みに合わせて楽しむ乱読こそ大学生の特権
文学部日本文学科 出口智之 講師


読書の楽しみは、現実には体験できないような経験ができること。感受性が豊かで時間が取れる大学時代こそ、大いに乱読して自分の世界を広げてほしいですね。かつて「大学生ならドストエフスキーやマルクスは読んでいるのが当たり前」といわれた時代もありましたが、そのような普遍的な価値観は崩壊し、一方で多様な好みに合わせた読書の楽しみ方が広がりつつあります。

例えば、取っつきやすいところで東野圭吾の作品を1冊読んでみる。すると、それを入り口に宮部みゆきや桐野夏生など、複雑な心理描写や時代背景を描く作家に興味がつながっていく。そこからは、海外ミステリーや幻想文学、社会派小説など、広大な海原のごとく読書の世界が広がります。とはいえ、流行に惑わされないことも大切。一過性の読書は蓄積せず、つかの間の暇つぶしに終わってしまいかねません。

読書を通して自分の好みや考え方が分かると、自分で気づかなかった自分自身を知ることにもなります。それはまた、多様な価値観や考え方があることを知り、社会から求められるコミュニケーション力の育成にもつながる。読書はその格好のトレーニングです。

Monitor's Voice「おすすめの一冊」はこれ!

勇気をくれた本
岩崎晋也さん(農学部3年)
『リッツ・カールトン 一瞬で心が通う「言葉がけ」の習慣』(高野登著)

高校生までほとんど本を読まなかった僕が読書の面白さに目覚めたのは、図書館で新刊書を借りたことから。ジャンルが多様な新刊書はいつも新しい発見があり、最近はそれ以外の本もよく読むようになりました。

この一冊は、効率では測れない思いやりやいたわりの大切さを気づかせてくれ本。読み終わった日、駅で大きな荷物を抱えたお年寄りに駆け寄り荷物を運ぶ手伝いができたのは、この本から行動する勇気をもらったからだと思います。

『「はやぶさ」式思考法 日本を復活させる24の提言』(川口淳一郎著)
「はやぶさ」のプロジェクトマネジャーだった筆者が、心に留めている言葉や生き方をまとめたもの。「日本が元気を取り戻すためにこのメッセージが励ましになれば」という言葉どおり希望を感じる。これからの日本を担う大学生にこそ読んでほしい一冊(文学部3年・女子)

『あの頃の誰か』(東野圭吾著)
短編集なので少しの待ち時間などに読むことができる。この筆者の作品は好きだが、いつも暗い印象。でもこの中には心温まる話もあり、映画化された「秘密」の原作「さよなら『お父さん』」も収録されている。筆者は古い言葉の言い回しを使うこともあり、勉強になる。(教養学部2年・女子)

学生たちの声から
▼ 自分の世界観に広がりが出るように感じるのも、読書の楽しみだと思う(開発工学部4年・女子)
▼知らない世界や行けない場所、別世界に浸れるのが読書の面白さ。何かを考えるきっかけになることもある(生物理工学部3年・男子)
▼本はおやつのようなもの。なくてもこれといって困らないが、あるとちょっといい気分(文学部3年・女子)
▼本を読んだ数、登場人物の数だけの人生観、考え方を感じることが一番の楽しみ。私の人生は一度きりでも、読書によって多くの人の人生に触れることができる(農学部3年・男子)
▼ 読書は自分の糧。人との会話で「読んだよ」と話題になる楽しみもある(健康科学部4年・女子)
▼小説には主人公の心理描写があり、「こういうときこんなふうに考える人もいる」と、人付き合いに役立つ勉強もできる(教養学部2年・女子)
▼読書は暇な時間を有意義に使う道具の一つだと思う(海洋学部2年・男子)
▼ときにはSFを読んで現実逃避に浸り、あるときは理学書など知識を得る。本は一つのアイテム(理学部3年・男子)
▼何となく「読もうかな」と思ったら、図書館や本屋に行く。読書は楽しみというより空気のようなもの(情報通信学部3年・女子)
▼ボキャブラリーを増やし、感性を鍛えるのにも適している読書は、とても楽しい勉強(情報理工学部3年・男子)