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コラム

2011/12/01
東海大学の先生方が、教育・研究活動などを通して学生と接する中で感じたことをつづったリレーコラム(Back Number掲載中)

阿蘇校舎・農学部とのデザインプロジェクト

芸術工学部くらしデザイン学科 伊藤明彦 教授

旭川校舎には、東海大学のキャンパスの中で最初に冬が訪れる。遠く九州阿蘇の山並みは想像の中では雄大で牧歌的に感じられるのだが、「阿蘇にも冬は雪が降るのですよ」と教えてくれたのは、農学部の伊藤秀一先生だった。農学部の学生が着用する学内専用のつなぎをデザインしたいというお話をいただき、農学部からは伊藤秀一先生と岡本智伸先生、そして両方の学生チームを交えたテレビ会議を行い、防疫の必要から学内専用と表記すること、キャンパスにいる動物たちをイラストにしたいことなどを確認した。

お二人の先生には、以前に旭川校舎でお会いしたことがある。いろいろと連携しましょうというお話を交わしていた。ところが、テレビ会議は、なかなか場の空気が読めない。おそらく、阿蘇校舎を知らないということが一番の原因かと後に気がついた。動物と身近に触れ合う感覚が実感できていないことも、理由の一つかもしれない。しかし一方で、元気な阿蘇の学生の様子がとても魅力的で、新鮮な発見でもあった。農学部と芸術工学部とでは、遠隔地で分野も異なるが、北海道と九州には、農業や観光などで共通する点も多い。北と南の連携には大いに可能性が潜んでいると確信した。

「伊藤先生、伊藤です」と、伊藤秀一先生とのメールのやりとりは、少しややこしい。同じ姓を集めてプロジェクトを作ったら、かなり大変なことだろうと想像してしまう。今の自分の職場には幸い伊藤が一人なので、○○の伊藤ですと名乗らなくともすむので助かっている。背中に阿蘇校舎の動物たちのイラストが入ったつなぎは、すでに農学部で活躍していると聞いている。デザインにかかわった旭川の学生たちにも、胸に東海大学農学部と刺繍されたつなぎが届いた。

今は、ムラサキマサリという芋から抽出した色素を活用した、飲料などのパッケージ・デザインをする計画が進行している。阿蘇校舎・農学部とのデザインプロジェクトは、これから先も進展しそうな気配がある。「阿蘇はデザインに飢えている」と阿蘇の伊藤先生は言う。デザインはコミュニケーションを扱う仕事でもあり、相手を理解する仕事でもあるので、こうした交流を通じて相互の問題意識が育つのは貴重な経験でもある。テレビ会議のぎこちない進行や、十分に時間を使えないことなど、自分自身の課題も山積していることが見えてくる。できたこともできなかったこともある。だから、学生とは、仲間でもありライバルの一人でもあると思って付き合えたらと思う。

暖かな地方では、一年中自転車に乗れるのだろうと思うと、少し憧れる。季節の移ろいにさらされながら年の瀬も迫ろうとしているこのごろだが、学生たちと話していることは、「阿蘇に行かなくっちゃね」でした。

 
(写真)飲料のパッケージデザインに取り組んでいる学生たちと

いとう・あきひこ 1960年北海道生まれ。北海道教育大学札幌校美術科卒業。専門は造形表現。




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