特集:キャンパス展望
2012年3月1日号
模擬裁判で民法の世界を体験
法学部法律学科 谷江陽介 講師

東海大学に着任してはや3年が終わろうとしている。「光陰矢のごとし」とはよく言ったものである。着任直後、いきなり700人弱の授業を受け持ち、文字どおり右往左往して、言葉に詰まりながら授業をしていたことが懐かしく思い起こされる。法学部の学生からは、今も噛み噛みじゃないか、というつっこみを受けそうだが……。

自虐ネタはこれくらいにして、本欄では、私のゼミの方針について報告することとしたい。民法ゼミでは、物の売買・建物の貸し借りといった契約関係、結婚・相続といった家族関係を中心として、市民相互間の法律問題を幅広く取り扱っている。法律は「説得の学問」であるため、結論そのものよりも、そこに至る過程を丁寧に説明して、その結論が説得的だということを示すことが求められる。

「原告の請求を棄却する。その理由は特になし」という裁判が認められないことを考えれば、このことは明らかであろう(「棄却」とは、裁判所が受理した訴訟について審理の結果、請求などを退けること)。

今年度のゼミでは、説得のスキルを身につけるという目的のもと、2度にわたって、駒澤大学、桐蔭横浜大学との3大学対抗模擬裁判を行った。「更新料支払訴訟」を例に、模擬裁判の流れを簡単にみていくこととしよう。

建物賃貸借契約において、更新料支払いの特約が設けられていた。更新の際、賃貸人は、賃借人に対し、この特約に基づき更新料の支払いを請求した。賃貸人の請求を認めてよいのか、原告(賃貸人)被告(賃借人)、裁判官に分かれて議論を行った。

原告は、契約締結の際に、被告に対して特約の内容を説明したこと、被告は特約の存在を認識したうえで契約を締結したことから、両者の間で更新料支払いに関する合意がなされており、原告の請求に理由があると主張する。これに対して被告は、次のように反論する。更新料について、具体的な中身のわからないあいまいな性格を有する金銭であり、契約時に支払う各種金銭(敷金・礼金・家賃など)との関係も明らかではない。賃借人は、契約時の支出額や月々の賃料に目が向きがちで、更新料支払いの特約は、消費者である賃借人の適切な判断を妨げるものである。このことから特約は、民法、消費者契約法の規定に反し、無効である。したがって原告の請求に理由はない。

最終的に裁判官は、原告、被告の議論を踏まえて、どちらの主張がより説得的といえるのか、という観点から判決を下す。原告、被告、裁判官になりきって、自ら考えたことを自分の言葉でプレゼンすることとなる。これにより、学びの枠をこえて、就職活動や卒業後の社会でも役に立つものになると確信している。

昨年12月開催の3大学対抗模擬裁判では、東海大学が優勝した。他大学の学生とともに、模擬裁判、その後のコンパ、カラオケ(学生は翌朝まで元気に歌っていた)を行うことにより、学生同士が大きな刺激を受ける機会となったように思う。ゼミでは、このほかにも、合宿、ボウリング大会などを開催している。「勉強するのも遊ぶのも全力で!」というスローガンのもと、今後も活動していきたい
と考えている。

 
(写真)模擬裁判後のコンパ会場にて。上段右端が谷江講師

たにえ・ようすけ 1980年香川県生まれ。専門は民法、消費者法。