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コラム

2012/06/01
東海大学の先生方が、教育・研究活動などを通して学生と接する中で感じたことをつづったリレーコラム(Back Number掲載中)

学生の自主的な情熱を発掘したい

工学部機械工学科 落合成行 准教授

今年2月16、17日の2日間にわたり、文部科学省主催による「第1回サイエンス・インカレ」が開催された。「課題設定能力、課題探求能力、プレゼンテーション能力等を備えた創造性豊かな科学技術人材を育成する」ことを目的に、自然科学系全分野の大学生、短大生、高等専門学校生が自主研究を発表し競い合う場として初開催されたものである。本稿では、著者がこの催しに参加して感じたことを述べたい。

著者が開催を知ったのは昨年の8月ごろ。エントリーに際しては約12ページの論文を提出する必要があるなど、学生にとっては大変なチャレンジだった。共同で研究している橋本巨教授とともに研究室の学生に案内したところ、6件が応募。年末の研究室の忘年会では「何件が採択されるだろう」と、落ち着かない思いで学生と話し合っていた。年明けに主催者から、すべてが採択されたとの知らせを受け、喜びを分かち合った。

この催しでは、「卒業研究に関連する研究」と「卒業研究に関連しない研究」の2種類があり、それぞれ「口頭発表部門」「ポスター発表部門」に分かれている。各会場で行われた発表会はいずれも大変な活気で、研究内容を多くの人に伝えたいというエネルギーに満ちあふれていた。その中で、多くの「卒業研究に関連しない研究」の参加者に研究を始めた動機を聞いた。するとほとんどの学生が、「4年生になる前に研究に取り組めるシステムが大学にあったから」と答えてくれた。我々の機械工学科としても、こうしたシステムを用意できないかと思案している。

また東海大学の3年生で、「卒業研究に関連しない研究」を発表している学生にも出会った。幼いころからディスプレイに興味があり小学生のときに自主製作に取り組んだが、限界を感じ断念していた。ところが大学で関連の研究をしている先生に出会い、研究室の設備を使用させてもらえることになったとのことである。自らの興味から発したこの発表からは、卒業研究とは違う情熱を感じた。実は、このような学生が埋もれているのではないかと思っている。

さて研究室から参加した学生は、「口頭発表部門」「ポスター発表部門」の各部門で、工学系分野から各1件のみ選出される「奨励表彰」を受けることができた。サポートをいただいた皆さまに、この場を借りてお礼を申し上げたい。一連の取り組みによって、学生が想像以上に大きく成長したと実感している。

現在大学教育は、岐路に立っているといわれる。こうした中、サイエンス・インカレを通して、教員が指示するまでもなく、目標に向かって懸命に学修し、成し遂げていく学生たちの姿を数多く見た。ここにヒントがあると考えている。このような要素を教育カリキュラムに取り入れていくためには、工夫や努力が必要であると思うが、あの場で見たような学生のイキイキとした姿を毎日の教育の現場で見るために、知恵を絞りたいと考えている。

 

(写真)サイエンス・インカレに出場した研究室の学生たちと

おちあい・まさゆき 1970年静岡県生まれ。94年東海大学工学部生産機械工学科卒業。99年東海大学大学院工学研究科機械工学専攻博士課程後期修了。博士(工学)。同年、日本精工㈱入社。2005年より現職。専門は、トライボロジー、設計工学など。

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