特集:キャンパス展望
2012年7月1日号
先輩から学ぶ「一次救命処置(BLS)」
医学部医学科 辻 千鶴子 講師

近年、突然の心停止患者に対して、その場に居合わせた市民による心肺蘇生とAED(自動体外式除細動器)の利用を基本とする一次救命処置( B L S : basic life support)の重要性が認識されるようになり、AEDの普及とともに、一般市民へのBLS教育が求められています。伊勢原校舎でも、医療従事者はもとより、非医療従事者を含むすべての教職員に対してBLS講習を行ってきました。

学生についても、臨床教育が始まる高学年だけでなく、新入生(新1年生と2年編入学生)に対するBLS教育を2007年度から少人数のグループに分けて週1回、1年間にわたりスキルクリニックを利用して実施しています。スキルクリニックは、高機能人型シミュレーターを含む多くのシミュレーターやトレーナーが備えられている施設です。研修医、看護師など多くの教職員、学生に対して、医療技術を磨いたり、再確認する場として開放されており、BLS講習を含めて年間に延べ5000人以上が利用しています。

学生のBLS講習がスタートした07年度は、基礎系教員と教育研究支援センターの技術職員を中心としたインストラクターチームが指導しましたが、08年度からはより教育効果を高める目的で、臨床実習(クリニカルクラークシップ)で救急・麻酔科を回っている5年生の学生が後輩を直接指導する「屋根瓦方式」を採用しています。

かつて教えられた側の先輩が今度は教える側に回る「屋根瓦方式」は、新入生へのアンケート調査で、実習への取り組みの姿勢や実習の雰囲気、実習の効果などのすべての項目で、よい結果になりました。特に「必要な場面で実際に実施できるか」との問いに対して、肯定的な答えをした学生の割合が07年度には約70%だったものが、08年度には95%以上に増加しました。近い将来の目標となる5年生の先輩に指導してもらうことで、BLSをより身近に、現実的に捉えることができたためと考えられます。

一方、5年生は多くの学生が積極的に参加し、BLSの指導が楽しかったと答えています。また、ほぼ全員が教えることで知識や技術が確実になったと述べています。新入生だけでなく、双方にとって意義のある実習といえます。実習の休憩時間に、授業のことやこれから体験する臨床実習のことなど、先輩後輩で和気あいあいと話し合っており、大変よい雰囲気で実習が行われていることがよくわかります。

今年は1年時に当時の5年生に指導を受けた学生が、学生インストラクターとして参加する最初の年です。5年生に話を聞くと、1年時には指導してくれた先輩が輝いて見えたそうですが、今5年生になり、責任の重さを感じていると答えてくれました。これから医師として大きな責任を担っていくことになります。これをよい経験として成長していってほしいと願っています。
 

(写真)先輩が後輩を指導する「屋根瓦方式」で行われるBLS講習

つじ・ちづこ 1953年東京都生まれ。お茶の水女子大学理学部生物学科卒業、同大学院理学研究科生物学専攻修士課程修了。医学博士。専門は呼吸生理学。