特集:研究室おじゃまします!
2012年8月1日号
便秘の改善からダイエット効果まで!? 
健康野菜「ヤーコン」を食卓へ
農学部応用植物科学科 村田 達郎教授 松田 靖准教授


健康野菜として注目されているヤーコンは、南米アンデス地方原産のキク科植物。塊根の見た目はサツマイモにそっくりだが、1985年に日本に導入された比較的新しい作物だ。このヤーコンの品種改良と商品開発に取り組んでいる、農学部応用植物科学科の村田達郎教授(学部長)と松田靖准教授の研究室を訪ねた。


農学部でヤーコンの品種改良に取り組み始めたのは1999年のこと。「阿蘇地域に広がる中山間地を活用して、町おこしにつながる新しい作物を―との思いから、模索していた中で出合ったのがヤーコンでした」と村田教授は振り返る。原産地のアンデス地方と阿蘇の気候条件が似ているということも、栽培上の強みになると考えた。
 

さっそく、近畿中国四国農業研究センターから育成系統を分譲してもらい、栽培試験を開始。同時に交配によって阿蘇地域に適したヤーコン品種を作り出すことに着手した。ヒマワリに接ぎ木をして人為的に花を咲かせ、ある系統のおしべの花粉を別の系統のめしべに受粉させ、その種子を採る―。何度も交配を重ねることで多様な雑種を作り出し、求める性質(多収量、糖含量の向上など)を備えた品種の作出を目指した。

10年以上に及ぶ品種改良の結果、1株あたりの塊根収量が5前幣紊函△海譴泙任謀佻燭気譴討い詆兵錣茲蠅盥蘯量を示す系統で、なおかつ糖度が14度以上の高糖度系統の選抜に成功。ようやく「2、3年後には、新品種としての登録に向けて動き出したい」という段階にまでこぎつけた。「品種改良に10年、20年という年月をかけるのは当たり前」と松田准教授。すぐには結果が出ない、息の長い研究分野なのだ。

効率的に摂取できるシロップを開発

ヤーコンの栄養特性としてまず挙げられるのが、便秘や脂質改善に効果のあるフラクトオリゴ糖を多く含んでいること。一般的にキク科植物はフラクトオリゴ糖を多く含有しているが、その中でも飛び抜けて多い=表参照。これに加え、赤ワインとほぼ同量のポリフェノールも含有。近年では、ダイエットに効果があるという趣旨の論文も発表されるなど、高い機能性を有する食材として注目を集めている。

体にいいこといっぱいのヤーコンだが、生のままでは長期の保存性が劣るという欠点も。そのため村田教授らは、阿蘇校舎内にある農学教育実習場と共同でヤーコンを使ったジュースや粕漬けといった加工品の開発にも取り組んできた。2011年度には学校法人東海大学総合研究機構の商品開発助成にも選ばれ、ヤーコンシロップの商品化に向けた研究開発を推進。農学教育実習場で、フラクトオリゴ糖を損なうことなく濃縮する技術を完成させた。

村田教授は、「ヤーコンの高い機能性を効率的に摂れるのが、シロップの長所。ダイエットだけでなく、生活習慣病の予防などへの活用も期待できる。今後は医学部とも連携を図るなどして、新たな可能性を探っていきたい」と抱負を語っている。

focus
植物の特徴を知り、長所を伸ばす
品種改良で社会に貢献する



村田教授と松田准教授の専門である植物育種学は、植物を遺伝的に改良するための理論や技術を研究する農学分野。二人はこれまでにも、大量増殖や細胞融合などのバイオテクノロジーを用いたサツマイモの改良や、交配による芝の品種改良などを手がけてきた。

「品種改良で農業や社会に貢献できる」という高校の生物教諭の言葉にひかれて、農学分野へと進んだ村田教授。「植物にはそれぞれ特徴がある。その良い部分を伸ばしてあげたい、という気持ちで研究を続けています」。植物の成長の様子、葉や花の色や形、顕微鏡で見る細胞……。そのどれをとっても美しく、見ているだけで楽しいし、感激する。「研究にはロマンがないと面白くない。植物の世界は、ある意味では “美の世界”。美しいと思う気持ちも大切です」

最近少し物足りなく思うのは、受け身の学生が多いこと。「教員の指示を待っているだけではダメ。自分の力で不思議だなと思うことを見つけ、爐竿咾鮨べるより研究が面白い〞ぐらいの気持ちで研究に没頭してほしい」と学生を鼓舞する。

 
(写真上)ヒマワリに似たヤーコンの花。茎葉部は家畜飼料などに、塊根部が食用に利用される。生でもサラダ感覚で食べられ、ナシのようなサクサクとした食感と甘みが特徴。村田教授らは、熊本県菊池市の農家にヤーコンの栽培を提案。今では市の特産品の一つとして成長している
(写真下)ヤーコンシロップの試作品

むらた・たつろう(写真右) 1952年熊本県生まれ。鹿児島大学大学院農学研究科修士課程修了。農学博士(京都大学)学位取得。
まつだ・やすし 1967年福岡県生まれ。宮崎大学大学院農業研究科修士課程修了。農学博士(鹿児島大学大学院連合農学研究科)学位取得。