News:学生
2012年10月1日号
夢を乗せたロケット、大空へ
“海打ち”実験に初成功、学生ロケットプロジェクト

チャレンジセンター「東海大学学生ロケットプロジェクト(TSRP)」が8月17日から24日まで、秋田県能代市で開催された「第8回能代宇宙イベント」に参加。同市内の落合浜海水浴場跡地でハイブリッドロケットの打ち上げ実験を行った。今回は、ロケットの高高度化を目指し “海打ち”に挑戦。2年前の失敗を乗り越え、学生たちの夢を乗せたロケットは高度600メートルまで達した。

固体と液体の燃料を組み合わせて打ち上げるハイブリッドロケットの研究開発と打ち上げ実験に取り組んできたTSRP。近年は、これまで培ってきた技術力を生かして、新たなデータ収集などを繰り返し、より高い打ち上げ高度を目指してきた。プロジェクトマネジャーの坂野文菜さん(工学部2年)は、「ロケットの打ち上げには、安全確保のために落下予測範囲を閉鎖する必要があります。範囲の広がる高高度化は、陸上での実施が難しかった」と説明する。
 
そのためTSRPでは約3年前から、落下地点の障害が少なく、安全確保が容易な海上への打ち上げ―いわゆる“海打ち”を計画。発射場の開拓や落下したロケットの回収技術確立を図り、2010年3月に同市内で日本の学生ロケット団体では初の海打ち実験を実施した。しかし、結果は燃料タンクとエンジンの不具合により失敗。その反省から、この2年間は陸上での打ち上げ実験を重ねてデータを蓄積し、燃料タンクの気密性改善やエンジンの改良に取り組んできた。

縁の深い能代でリベンジを果たす

メンバーに再挑戦の気運が高まる中、2度目の海打ち実験が毎年8月に開かれる「能代宇宙イベント」に決定した。同イベントは学生や社会人らによるロケット打ち上げや自律ロボット制御のアマチュア大会で、TSRPはイベントが発足した05年から毎年打ち上げに参加。思い入れの強いイベントでリベンジを果たすことを誓い、メンバーたちは、「ロケットを確実に回収し、データを収集したい。そのためには、機体の防水性能を高め、落下したロケットを迅速に回収するチームワークが必要」と準備に励んできた。

打ち上げは当初8月23日に予定していたが風雨のため順延し、翌24日に実施。上空1000メートルまで到達する性能を持つH-28号機を使用したが、確実性を重視しこれまでも実績のある600メートルに高度を設定した。祈るような思いでメンバーが見つめる中、ロケットは勢いよく大空に打ち上がり、設定どおりの高度で分離。落下地点もほぼ予測どおりで、地元漁協などの協力を得てスムーズに回収することができた。坂野さんは「実験成功には、先輩方から受け継いできた技術が不可欠でした。さらに研究と実験を重ね、受け継いだプロジェクトの目標をつなげていきたい」と語った。
 

(写真上)ハイブリッドロケットは低コストでの製作が可能で、環境に優しく、安全性が高い
(写真下)TSRP全員の思いを乗せて打ち上がるH-28号機。「できるだけ高く飛ばすことにロマンを感じる」と坂野さんは目を輝かせる