特集:キャンパス展望
2012年11月1日号
学生が成長できる場をつくる
産業工学部電子知能システム工学科 松本欣也 准教授

先の第43回海外研修航海に団役員として参加しました。その際強く感じたのは「学生は確実に成長する」ということ。日々の講義や学生との会話を通して、激変する部分と本質的に変わらない部分を感じます。そんなとき、どうしても変化に目が向いてしまいますが、教員として本質を忘れず学生が成長できる場をつくる使命感を強く感じます。

学生時代の話になりますが、私は「研究テーマは自ら探してくるもの」と信じていました。電波物理研究室に所属していた私は、「電子工学を応用して新しい発見ができる分野はないか」というテーマを強く感じていて、特に面識はないのにもかかわらず分野外の天文学シンポジウムに参加したり、知り合いになった他大学の学生の研究室を訪問したりしました。今思うと無鉄砲な気がしますが、そんな活動の中で知り合った当時の学生の多くが、現在は研究所や大学の研究室で働いています。私は当時、あまり例のない受託大学院生という方法で大学院に所属しながら、国立天文台で研究ができました。このリンクをしてくださったのが研究室の教授でした。これは、自分が成長できる場の提供であったと思います。
 
1994年にシューメーカー・レビー第9彗星が木星と衝突したとき、私は観測に参加できなかったのですが、先生は独自の視点で電波観測されていました。当時、研究者の多くは本体の接触時間を観測時間に設定して、赤外線の観測網を敷いていました。しかし、先生は木星の自転の影響を考慮して観測時間を少しずらし、電波で観測したようです。これが奏功して、世界的に貴重な成果を出されました。このとき、観測に参加できなかた残念さとともに、学んだことが一つあります。「分野の主流を把握しつつ、独自の視点を常に持て」ということです。研究者としては当然のことで、以前から感じてはいましたが「心に刻み込まれた」瞬間でした。

さて、熊本校舎では以前から付属高校との教育連携活動がありましたが、最近、私の研究室も活動に参加しました。内容は、付属高校の授業「課題研究」の支援をさせていただくというものです。高校生なのに「フーリエ変換」を知っていたり、普通科なのにボール盤の扱いが上手だったりと、これまでのイメージを激変させる発見があり、学生に接する際の視野を広げねばと感じています。具体的な授業テーマは、風力発電量の無線モニタや消音制御時の音場の可視化などです。12月の発表会に向けて真剣なまなざしが続きます。

日々の大学生に対する教育に加えて、違う年齢層の若者に対する教育支援の経験が得られつつあります。道具は十分ではありませんが、使えるものを組み合わせてより良い学びの場を提供したい。大学を志望してきた皆さんは、それぞれが等身大のテーマを持っていると私は思います。成長の仕方には差がありますが「必ず成長します」から、急がず落ち着いて、自らの向上のための時間をまずつくり、努力を継続してください。必ず結実します。

 

まつもと・きんや 1967年愛媛県生まれ。電気通信大学大学院電子工学研究科博士課程退学。博士(工学)。国立天文台受託大学院生として、国立天文台野辺山宇宙電波観測所で研究に従事。専門は電波計測および無線・信号処理。