Column:知の架け橋
2013年2月1日号
「震災・防災を考える」
法学部法律学科 小野寺千世 教授
法律の役割を知り運用に関心を
東日本大震災での適用や制定をめぐって


東日本大震災時に東海大学医学部が災害医療派遣をしたように、直ちに被災者に寄り添う学問分野がある。一方、法学は直接目に見える形で役に立つことは難しいが一定の役目を果たすものであり、ここでは法がいかに適用されたか、どのような役割を果たすかについて触れておきたい。

私は法律の中でも商法・保険法を専門としている。保険は、偶然に発生する保険事故によって生じる損害に備えて保険料を出し合い、その資金によって事故の発生による経済的損害を填補(てんぽ)する給付がなされる制度であり、生命保険と損害保険に大別される。契約内容は約款に規定されるが、特に注意しなければならないのは、このような場合には保険金を支払わないということを規定する免責条項である。

生命保険契約では、地震・噴火・津波などによる損害は、場合によっては保険金を支払わないこととされている。この地震免責条項によれば、東日本大震災において保険給付がなされないことも考えられたところ、業界団体である社団法人生命保険協会の働きかけによって本条項は不適用とされ、また、保険契約を維持できるよう保険料の払込猶予期間の延長措置が講じられた。

さらに、平時は、保険金受取人による請求がなされてはじめて給付されるが、大規模災害時には、受取人が保険契約の存在を知らなかったり死亡していたりする。今回の大震災では、個人情報保護法に抵触しないよう、戸籍法・住民基本台帳法を遵守したうえで、保険会社の側が受取人を探して給付するという対応がとられた。このような特別な法の対応は、今回のような大規模災害において、被災後の国民生活を支えるという要求に応えたものである。

損害保険である火災保険、自動車保険、傷害保険においても、地震・噴火・津波などによる損害は免責とされている。震災による損害に対する備えとしては、免責条項を理解したうえで、たとえば、住宅火災保険に特約として地震保険を付すことが必要となる。ちなみに宮城県は過去にも宮城県沖地震など、最高震度5、6の地震を何度も経験していることから、全国一地震保険の付保率が高いとの統計がある。他方、保険料は全国一律ではなく、この点が課題とされている。

東日本大震災に関連して、2011年、12年で47件の法律案が国会に提出され、100をこえる関連政令が制定された。たとえば東日本大震災復興基本法をはじめ、東日本大震災復興特別区域法、津波防災地域づくりに関する法律、福島復興再生特別措置法、災害対策基本法の一部を改正する法律などが成立した。法律にはさまざまな役割があると考えられるが、震災からの復興を果たすには、国民生活の安全を守ることがいっそう重要になる。法律が適切に運用されるよう私たちは関心を持ち続けることが必要だ。

東日本大震災から1年11カ月が過ぎ、津波後の火災が延焼した私の出身小学校の校舎について、保存するか解体するかの検討がなされている。まだまだ復興への道のりは厳しいと感じるが、一日も早い復興を祈るばかりである。

 
(写真)石巻の仮設住宅。月に1度、無料の法律相談が行われている

おのでら・ちせ 宮城県石巻市生まれ。筑波大学第一学群社会学類卒業。同大学院博士課程社会科学研究科単位取得退学。法学修士。専門は商法。日本私法学会、日本海法学会、日本保険学会に所属。