特集:東海大生200人に聞きました
2013年2月1日号
敬語の使い方に自信がありますか?
自信が「ある」「少しある」と半数が回答
それでも敬語は難しい !?


東海大生200人に敬語に関するアンケートを実施したところ、使い方に自信が「ある」「少しある」と半数が回答。“難しい”というイメージがある敬語だが、学生たちは本当に正しく使えているのか? その実態に迫った。



今回のアンケート結果を、言葉に関する数多くの著書がある言語学者の小林千草教授(文学部日本文学科)に見てもらったところ、「授業などの一環で学生一人ひとりに敬語に関する質問をすると、ほとんどが『自信がない』と答えています」と指摘。

それを踏まえ、「自信が『ある』『少しある』と答えた人の多くも、実は敬語を完璧に使えているという自信があるわけではないと思います。むしろ『敬語を大切に思っている』という意識の表れが、このような結果につながったのではないでしょうか」と分析する。

それを裏づけるかのように、「敬語は必要だと思いますか?」という問いに、「必要」64%、「ある程度必要」34%、合計98%と、大多数の学生がその必要性を認識しているという結果になった。

「目上の人から押しつけられて使うものというよりも、仲間同士のコミュニケーションの一手段として敬語を使いたいと考える若者が増えている。さまざまな事象が複雑化する現代、自分を取り巻く人間関係や社会関係をどのように捉えるのか――それが現代の敬語に求められているのです」と小林教授。敬語への意識の高さは、狢梢佑紡个靴撞い鮖箸〞心優しい若者の増加を物語っているのかもしれない。


学生たちの声から
▽敬語を正しく適切に使うことは難しいが、日本の文化の一つとして大切に受け継いでいけたらと思う(文学部4年・女子)
▽年下の友人がときどきため口を使うのがむかつく。年上の人には絶対に敬語を使おうと思っている(情報通信学部1年・男子)
▽いつもどおりの敬語を使えばよかったのに、偉い人の前で緊張してしまい変な敬語になってしまった(工学部3年・男子)
▽自分が気づいていないだけで、失礼な言葉や間違った敬語になっているのかもしれない。来年度からは社会人なので、今まで以上に気をつけたい(農学部4年・男子)
▽学年が近い人など、歳の差があまりない人には敬語なしで話したい(教養学部3年・女子)
▽相手が同世代であっても、人見知りなので初対面の人には敬語を使ってしまい、なかなか打ち解けられない(工学部4年・男子)


敬語Q&A
敬語に関する失敗談は、誰にでもあるはず。学生のフリーコメントの中から2つを取り上げて、小林教授にアドバイスしてもらった。

Q 間違った使い方だと知ってはいますが、たまに二重敬語を使ってしまうことがあります(生物理工学部2年・女子)

A 文化審議会が2007年に答申し、文化庁が発表した「敬語の指針」では、敬語には5つの種類があると示されています(従来は3種類)=表参照。二重敬語とは一つの語において同じ種類の敬語を二重に使ったものを指し、一般的には不適切な使い方とされています。しかし中には、「お召し上がりになる」(尊敬語の「召し上がる」「お〜になる」の二重敬語)のように、習慣として定着している語もあります。

これはなぜかというと、言葉は時代によって移ろいゆくものだからです。雑巾が古びてすり減ってくるのと同じく、敬語がすり減って使っていても物足りない気持ちになる。つまり、相手に対してより丁寧に話したい、という思いが二重敬語として表れるのだと思います。私自身は、二重敬語を使う相手に目くじらを立てるのではなく、「最大限の敬意を表してくれているのだな」と好意的に考えることにしています。




Q 大工のアルバイトをしていた際、「〜っす」という語尾を使って話していたら、そんな敬語はないと怒られてしまった(開発工学部4年・男子)

A 「〜っす」は「です」がなまったもので、いわゆる略語です。元気いっぱいな気持ちを伝えたいと思うのか、友人同士に限らず、授業やゼミの際にも「〜っす」と言っている学生が多いですね。敬語という観点から考えると、略語は失礼にあたります。これと同じように、「やっぱ」も「やはり」の略語であり、「〜っす」と同様に就職活動などの場面ではマイナス表現になります。口癖を直して正しい言葉遣いをするのは、とても難しいことです。今から気をつけておいたほうがいいでしょう。

話は少し変わりますが、若者同士でよく用いられる「ため口」は、敬語を使わずに相手との距離感をなくすものです。それを自己表現の一つとして考えると、円滑な関係を築くために場所や相手を選んで使う分には、決して悪いものではありません。ただし、自己表現ということは自己責任でもある―そのことを忘れないでください。敬語の使い方に悩んだときに参考にしてほしいのが、文化庁のインターネットサイト「敬語おもしろ相談室」(http://www.bunka.go.jp/kokugo_nihongo/keigo/index.html)です。文化審議会答申「敬語の指針」の一部を短編映像化したもので、敬語の基本や間違えやすい敬語などが紹介されています。ドラマ形式なので、面白くてわかりやすいですよ。


相手を尊重する気持ちが敬語の達人への近道になる
文学部日本文学科 小林千草 教授

相手を尊敬する気持ちを表す敬語は、人間関係を円滑にする大事なツールです。苦手だとプレッシャーに感じるのではなく、人間関係を洞察し、自己表現のあり方を深く考える機会と思えばいいのではないでしょうか。他人に言葉遣いを直してもらえればありがたいですし、敬語を使わずにムッとされたら「この人には敬語が必要なんだ」と気づくことができる。敬語に限らず、言葉(話し方)は一度で上手になりません。一回一回の積み重ねが大事なのです。

敬語の基本は相手を尊重すること。そのためには、敬語をたくさん知っているよりも、相手を尊重する気持ちが自分の中にあるかどうかが大切です。相手を尊重すると、いつしか相手もこちらを尊重してくれるものです。つまり、お互いに尊重し合う(相互尊重)ことが敬語の達人への近道なのかもしれません。

大学は学びの場所ですが、同時に大人社会の入り口でもあります。「自分は社会の中で暮らしているんだ」という意識を常に持ってキャンパスライフを送れば、正しい敬語も自然と身についてくるでしょう。そうすれば、就職活動の際にも戸惑うことなく面接に臨めると思います。