特集:研究室おじゃまします!
2013年4月1日号
50年後は5人に2人が高齢者!
人口減少社会における 日本の労働政策を考える
政治経済学部 小敏男教授

現在、高校や大学に通う若者が高齢者(65歳以上)の仲間入りをしている2060年。予測では、日本は5人に2人が高齢者の時代に突入している。人口減少と超高齢化に突入する社会において、労働力を維持・増加させるにはどうすればいいのか。政治経済学部の小敏男教授に聞いた。

国の政策研究機関である国立社会保障・人口問題研究所によると、2010年に1億2806万人を数えた日本の総人口は、2060年には8674万人と50年間で4000万人も減少。労働力の中核をなす生産年齢人口(15〜64歳)は、ほぼ半減するという=表イラスト参照。「働き手が少なくなったとき、労働力をいかに確保するのか? 労働市場を分析して問題点を明確にすることで、将来どのような緩和政策を取り入れたら効果があるのかが見えてきます」

そこで小教授は、―性労働政策、⊆唆函Ε法璽函Ε侫蝓璽拭次若者の就業政策、9睥霄圓僚業政策、こ姐饋佑力働政策、ゴ覿函Ω柩僖轡好謄爐5つを自身の研究テーマに設定。厚生労働省や総務省などが開示している膨大な統計データを分析することで、現状の課題をあぶり出している。

世の中の事象を科学的に分析する
「『働くor働かない』『子どもを産むor産まない』など、一見すると私たち一人ひとりが自由に選択しているかのように思われる物事も、実は経済変数である価格(賃金)によって制約されているんですよ」と小教授。

たとえば時給850円では働きたくないと思っている人も、それが倍以上になるのなら「ぜひ働きたい」と思うかもしれない―。つまり、市場が提供した価格(賃金)によって、個人の行動が決められていると定義づけることができる。このように、人文・社会科学の分野でありながら、数学や統計を使ってきわめてサイエンス的に世の中の事象を分析していくのが経済学の基本的な考え。そうした性質に着目し、犲匆餡奮悗僚王〞とも呼ばれている。

イクメンだけでは少子化は止まらない!?

ちなみに小教授によると、最近ブームのイクメンは、現状の雇用システムのもとでは少子化を抑止する効果のほんの一側面でしかないのだとか……。「総務省統計局が開示している約75万個のデータを使い、雇用形態や世帯所得、労働時間などを分析しました。すると、父親の所得が高くなると世帯あたりの子どもの数は増えますが、母親の所得が高くなっても増えないという結果が数字として表れてきました」
 
男性に対しては育児休暇や時短勤務といった労働時間を制約する政策よりも所得増加策をとり、女性に関してはライフワークバランスを推し進める―。それが、子どもの数を増やすのに一定の効果をもたらすと、小教授は結論づけている。「突き詰めて研究をしていくと、ほかの人が見えないものまで見えてくるのが、経済学の面白いところ。誰もが学者になるわけではないけれど、経済学の知識は就職活動や社会人になってからも役立ちます。経済を知ることは、世の中を知ることなのです」
(写真=小教授が編著を務めた『少子化と若者の就業行動』と『キャリアと労働の経済学』)




focus
人生の節目に恩師あり
経済学の面白さを知って研究者に


「本当は法学部に行きたかったんです(笑)」と話す小教授だが、「経済学のほうが面白いよ」と高校の先生に勧められて経済学科を選択。それでも大学入学当初は、経済学が何なのかまるでわからなかったという。「その魅力が少しずつわかってきたのは、ゼミに入ってから。学生がたった3人のゼミだったので、担当教授にじっくりと教えてもらえた。グラフや表を読み解くことで、世の中の仕組みがわかるということに気づき、とにかく面白くなりました」
 
大学卒業後は銀行に就職したものの、学問の道を捨てきれずに2年で退職して大学院へ。「大学院で出会った教授が、また素晴らしかった。学問はもちろんですが人間としても尊敬できました。この出会いがなかったら、研究者の道には進まなかったのかもしれませんね」

まさに人生の節目に恩師あり。「偶然ですよ」とは言うものの、出会いを大切にする姿勢が、人生を豊かなものにしているのかもしれない。「最近の研究者は一つのテーマを掘り下げていく人が多いけれど、私は逆。人口減少と労働政策をキーワードに、女性、高齢者、そして外国人労働者と研究テーマが広がっていき、それが互いにリンクしていく。でも、世の中も同じだと思うんですよ。全体像を見渡す力が、大事なのだと考えています」

 
こさき・としお
1958年石川県生まれ。東海大学政治経済学部卒業。中央大学大学院経済学研究科経済学専攻博士後期課程修了。博士(経済学)。