Column:知の架け橋
2013年6月1日号
「健康・スポーツを語る」
スポーツ医科学研究所 大学院体育学研究科
有賀誠司 教授

筋力トレーニングで生涯現役!
健康寿命を延ばして活動的な人生を



「健康寿命」という言葉をご存じでしょうか? 介護を必要とせず自立した生活を送ることができる生存期間を意味します。厚生労働省が発表した2010年の日本人の健康寿命の平均値は、男性70.42歳、女性73.62歳(要介護期間は男性9.13年、女性12.68年)となっています。長生きをして幸せな人生をまっとうするためには、介護を受けることなく、健康寿命を延ばすことがきわめて重要であるといえます。

要介護状態にならないためには、自分自身で移動できる能力(特に歩く能力)を維持し続けることが不可欠です。このような能力に支障をきたした状態は、「ロコモティブシンドローム」と呼ばれ、予防のためには、ウオーキングのような有酸素運動と並行して、筋力トレーニング(筋トレ)を実施すると効果的です。

近年、筋トレを実践する中高年の方が多く見られるようになりました。筋トレには体型改善の効果が高いことから、40歳代以上のビジネスマンの間では、若々しくポジティブな印象を与えることを目的に、積極的に取り入れる方が増える傾向にあります。このような状況は喜ばしいことですが、筋トレを実践しているのに、「駅の階段を昇るのは相変わらずきつい」といった声がよく聞かれます。これは、筋トレによって体型や筋力は改善したものの、生活動作の機能アップにはうまく結びついていない状態であり、もったいないことだと思います。

これまで筆者は、さまざまなスポーツ選手を対象に、プレーを改善するための体トレ―レーニングをメーンテーマとして研究・開発に取り組んできました。しかし、ここ数年、中高年の生活動作を改善するためのトレーニングのニーズが急激に増え、これに関する研究・開発を開始したところ、生活動作の機能改善のトレーニングの過程は、スポーツ選手とあまり変わりがないことがわかってきました。

スポーツ選手の場合、スクワットやベンチプレスなどの基本的なトレーニング種目によって個々の部位の筋力を鍛えるとともに、プレーと関連のある動作によるトレーニング種目(専門的トレーニング)を行うことによって、プレーの改善に役立てることができます。同様に、一般の方もウオーキングの歩幅や速度を上げたい場合、下半身の筋肉を鍛えるスクワットのような一般的な筋トレに加えて、実際の歩く動作と関連があるフォワードランジ=写真=のような種目(機能的トレーニング)を行うことで、より実用的な効果が期待できます。
 
「筋トレはきつい」「筋肉が太くなるからやらない」と言われる方もいらっしゃいますが、最近は、初心者や体力の低い方でも簡単に楽しく実施できる方法が普及し、どんどんハードルが下がっています。元気で楽しく活動的な人生を目指すなら、筋トレをぜひお勧めしたいと思います。


 
(写真)ウオーキングの動作と関連のあるフォワードランジ。立った姿勢(左)から1歩踏み出し(右)戻る動作を、左右交互に10回繰り返す

あるが・せいじ 1962年東京都生まれ。東海大学大学院体育学研究科修了。専門はトレ―ニング科学。ボディビル競技でアジア選手権準優勝の実績を持つ。著書に『40歳から始める一生衰えない筋肉のつくり方』(永岡書店)などがある。