Column:本棚の一冊
2013年6月1日号
『人を動かす』


“ジコチュー”を変えた人生の指南書
教養学部人間環境学科 隈本 純 准教授



私は自然豊かな九州の田舎町で生まれ育ち、子どものころから昆虫や魚類、動物を飼い育てることが大好きでした。そのため、本の出会いは小学生時代に愛読した『ファーブル昆虫記』や『シートン動物記』に始まります。その後、日本の厳しい自然の中でたくましく生きる動物を描いた椋鳩十の動物文学と出会い、『片耳の大鹿』や『あまみのくろうさぎ』など、次々に動物が夢に出てくるほどハマって読んでいました。
 
この原稿執筆にあたり、まず浮かんだのはそれらの児童書でした。しかし、そんな小学生が読むような書籍を大学生に紹介するのはいささか趣旨違いと判断し、大学生時代に出会い、その後も人生の指南書として影響を与えてくれている一冊をご紹介します。
 
就職活動を終えた大学4年の秋。卒論執筆のため大学図書館にこもっていたある夜に、この本と出会いました。『人を動かす』というタイトルが気になり書架から取り出すと、いつの間にか卒論の参考文献そっちのけで読破しました。いわゆる“自己啓発本”なのですが、著者は多彩なエピソードと文中所々に記される“名言”を用いて「そんな生き方ではだめですよ」と“生意気でジコチュー”な学生だった私を諭してくれました。人生初の啓発本に衝撃を受け、すぐに書店で購入しました。
 
大学卒業後の営業マン時代には会社のノルマに悩み苦しみました。そんなときは「第二部:人に好かれる六原則」「第三部:人を説得する十二原則」を何度も読み返し、お客さまの立場に立った営業の本質とは何かを考えました。そして教員となってからも再び本書を手に取り、「第四部:人を変える九原則」にマーカーを引き直しました。妻子を持つ今は、これまで線を引くことがなかった「付録:幸福な家庭をつくる七原則」に初めて線を引いています。本書読むたびに、描かれた理想の人間像には近づけていないこと、そうした生き方の実践ができていないことに気づかされ、深く自省しています。この本はこれからも私の座右の書であり続けることでしょう。
 
自己啓発に関する書籍は星の数ほど出版されていますが、長きにわたり世界中の人々に影響を与えてきた名著です。学生諸君、読むなら、今でしょ!

『人を動かす』
デール・カーネギー著
山口博訳 創元社

 
くまもと・じゅん 1967年福岡県生まれ。国際基督教大学大学院行政学研究科博士課程修了。専門はマーケティング、消費者行動。