Column:知の架け橋
2013年7月1日号
「健康・スポーツを語る」
海洋学部 海洋フロンティア教育センター
佐藤延男 准教授

新たな海の時代を開く
日本人のオーシャンライフを考える



「オーシャンライフ」という言葉をご存じですか? 海や海岸を活用し、海洋スポーツを楽しみ、海を感じ、海洋スポーツを生活に密着させて生きていく方法のことです。日本の海洋スポーツは今から50年ほど前の1964年、東京オリンピックを契機に紹介され始めました。ヨット、サーフィン、ウインドサーフィン、ダイビング、カヌーなどがその代表といえます。すべては諸外国から日本に伝えられたスポーツです。神奈川県藤沢市にある江の島ヨットハーバーは、東京オリンピックのヨット競技会場として整備されました。多くの日本人に海の魅力を伝える原動力となり、大海原に映える色とりどりのセールは、日本人の心に海の魅力を強くアピールし、人々を海に引き寄せたのです。
 
50年の時が流れ、日本の海は大きく変化し始めています。第一に2007年3月に整備された国内法「海洋基本法」です。そして翌年4月に発表され、今年4月27日に一部改正された「海洋基本計画」です。海に囲まれた日本が今までにない海を表現し、新たな日本の海を活用する時代が、すぐそこまで迫ってきていることは事実です。

私たち日本人の海は漁師の海であり、唯一、レジャーといえば海水浴であった海で、波に乗り、風をつかみ、そして海中で感動のシーンを目にしてきた多くのオーシャンライフを送ってきた人の50年の歴史は、新たな日本の海の時代のための土台となっているのです。近年では砂浜を歩く「ビーチウオーカー」が増加しています。私も晴れた日に砂浜をはだしで歩くことを大切にしています。

ストレスの多い社会の中に、簡単に非現実的な空間とエネルギーを兼ね備えた別世界があるのです。潮騒を体に吸収したときの気持ちよさは、人生さえも変えてくれるエネルギーを感じるのです。砂浜からエントリーするサーフィンやウインドサーフィン、ダイビングは、オーシャンライフの入り口でしょう。そこには、余暇時間を楽しみ、感激や感動する人生の「海」があるのです。
 
11年3月11日、東日本大震災が発生し、多くの尊い命が失われました。東北地方太平洋沿岸には多くの景勝地と、海洋スポーツに適した美しい海岸線が存在します。大震災と大津波の被災地には、たくさんの海洋スポーツ愛好家がいました。被災地に赴き、その現状を調査する中で感じたことは、海洋スポーツ愛好家たちの復興に対する考え方です。そこには漁労者や海洋従事者だけの復興の海だけではなく、「オーシャンライフ」のための復興の海があったのです。普通に砂浜を歩ける。普通に海で戯れることができる。普通に海に出ることがいかに生活に密着し、生きることの力になっているのかを実感するものでした。

日本の海は今後大きな変化をもたらし、多くの人々に影響を与えることでしょう。海に触れ、海を感じ、身近な海とかかわることこそが、健康を維持するための第一歩ではないでしょうか。

 
(写真)2011年のサマーセッション「サーフィン」の参加学生と(江の島東)

さとう・のぶお 1953年東京都生まれ。東海大学体育学部卒業。専門は海洋スポーツ指導法。日本海洋人間学会、日本野外教育学会に所属。著書に『佐藤延男のサーフィン入門』『佐藤延男のウインドサーフィン入門』などがある。