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コラム

2013/11/01
学生と日々接する中で感じていることや思いなど、
毎年3人の東海大学の教員がそれぞれの視点からつづるリレーエッセイ。

国際会議に参加して得られるもの

情報理工学部情報科学科 尾関智子 教授

読書の秋、食欲の秋、大学では学会の秋である。今年は11月上旬に韓国で開催される国際会議に大学院生2人と参加する予定で、英語での研究発表の指導に明け暮れる毎日である。英語で発表することは、発表する学生とそれを見守る教員双方にとって緊張感を伴うもので、会場に行くまでは相当の準備が必要である。しかし、何事も頑張ればご褒美もある。それは、頑張り尽くした達成感と、外国の空気に触れることによる開放感である。さらに、短期間で英語力が飛躍的に伸び、世界中の研究者と交流できるし、大きな視野を養える。

私は大学院1年の秋に、ドイツのベルリンで開催された国際会議に初めて参加した。ベルリンに着いた途端にスリにあって大きなショックを受けたが、それ以上にうれしいこともたくさんあった。名前を教科書でしか見たことのないような有名な先生が、大勢私のポスターを見に来てくれたのだ。これは女子学生の少ない学会での特権でもあったのかもしれない。高校生のころは地図と英語と数学が大好きで外国にも憧れていたが、まさか理系に進み研究発表をすることで外国に行けるとは夢にも思っていなかった。

自分の研究発表だけでなく、最先端のさまざまな研究に触れ、外国の研究者と交流し、文化に触れることは、とてもよい刺激となる。周りの景色が日常とは異なり、リフレッシュできる。また頑張ろうという気になるのだ。観光旅行とは違う喜びがある。大学教員になってからも、国際会議中は研究のことだけを考えていられる貴重な時間でもある。ラスベガスの国際会議では、あまりの解放感にピノキオのように鼻が伸び、耳が生えてくるような罪悪感にさいなまれることもあったほどだ……。

国際会議に参加することは、大学で「英語は必要だ。もっと勉強しなさい」などというより何倍もの効果がある。大学院生には自分の肌でさまざまなことを感じ、大学の中では経験することのできない多くのことを学んでもらいたい。どうか無事に発表を終えられますように。

(筆者は毎号交代します)

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