Column:本棚の一冊
2014年4月1日号
『テレマン 生涯と作品』


他山の石コロ?
法学部法律学科 塚本 孝 教授

 

テレマンをご存じだろうか。18世紀ドイツの作曲家で、バッハと同時代の人である。テレマンは、よく「当時はバッハよりも有名だった」と紹介される。テレマンの作品はどれも美しく明快で当時から人気があり、パリやロンドンでも出版された。曲種も教会音楽からオラトリオ、小歌曲、ありとあらゆる楽器のための独奏曲・合奏曲に及ぶ(世界で活躍する名手が本学から何人も出ている弦楽器ヴィオラ・ダ・ガンバのための曲もある)。
 
テレマンについて特筆すべきことは、市民のために、演奏が容易で、しかも小粋な曲を数多く作ったことだ。気心の知れた友人が集まり、あるいは家族で、音楽に興じることができるような曲である。また、貴族のサロンではなく、公開の音楽会を始めたのも彼だといわれている。テレマンは自伝によれば、これからは市民が中心となる時代だと考え、厚遇されていたアイゼナハの宮廷を辞して自由都市フランクフルトに移住した。数年後、ハンザ同盟の中心都市ハンブルクに移り、ここを終(つい)の棲処(すみか)とする。この犇ο孫〞でテレマンは、市民のための「忠実な音楽マイスター(親方)」として活躍した。
 
さて、筆者の母校は在野精神と称し、だいたいにおいて型にはまったことが嫌いで、判官びいきで、法学でいえば体系的整合性より常識にかなう結論を重んじ、国民を治めるための法律ではなく“国民の権利を守るために”法律を学ぶ気風を持つ。筆者は学生時代、本務をおろそかにして(民訴は今でいうC!)、バッハの陰に追いやられたテレマンに熱を上げた。楽譜や文献を集め、それを読むため語学を勉強した(実はテレマンも大学は法学部。成績は?)
 
本書カール・グレーベ著『テレマン』は、1970年にドイツのrororo写真文庫の一冊として出版され、筆者が学生時代に原文で懸命に読んだ伝記である。その後、1981年に服部幸三・牧マリ子共訳が音楽之友社から出版された。
 
東海大学は、部・サークル活動、ボランティア活動などに打ち込む者の多さと熱意と成果において他に後れをとることがない。本学では他学部の課目の履修も可能である。本務がおろそかになった筆者(とテレマン)を他山の石としつつ自身を磨き、学生時代にしかできないさまざまなことに挑戦してみてはいかがだろうか。


『テレマン 生涯と作品』
カール・グレーベ著
服部幸三・牧マリ子共訳
(音楽之友社)

 
つかもと・たかし 1952年京都府生まれ。早稲田大学法学部卒業。国会職員(調査および立法考査局長など)を経て現職。専門は国際法。