Column:知の架け橋
2014年10月1日号
「住を語る」
海洋学部環境社会学科
東 惠子 教授

人がまちを創り、まちが人を創る
住まう営みの景色としての地域景観


景観はその地域の自画像ともいえる。個性豊かな景観は、市民の地域への理解を深め、地域愛を育み、地域振興を担う。これからは市民にとって実感できる地域づくりを行い、個性豊かな景観をつくることが地域の魅力を創出するカギになると考える。

少子高齢化による急激な人口減少は地域の構造に大きな影響を与え、空洞化を進行させている。その衰退していく景観は、地域の活力を失わせ、アイデンティティをあいまいにする原因ともなっている。人口減少が日本全体を覆う問題になる今後、コンパクトシティなる中心地域への人口集中と公共施設の集約、それと表裏をなす周辺地域への2極分化は避けられまい。そうした前提での日本の国土の創出に向けて、地域の「リ・デザイン」が求められる。

一方、近年では未曽有の地震や大型台風といった自然災害のリスクが増大しており、戦後建設されたインフラの老朽化が顕在化する中、安全・安心のための維持管理・更新が急務である。戦後の復興に伴って地域開発・都市づくりは拡大の一途をたどってきたが、今後は量から質に転換し、新たな環境価値を持つ都市・地域をつくりあげることが求められる。安全で安心な美しく使いやすい空間づくりを通じて、ゆとりやうるおいある魅力的な地域を形成していきたい。

かかる状況のもと、我々は地域デザインについて明確なビジョンを持っていない。当然のことながら国民、住民のコンセンサスもない。平時での人口減少現象は近代に入ってから初めてであり、手探りで作業を始めるしかない。ピンチはチャンス、さまざまな課題を抱える現在だからこそ、地域再生の営みは郷土愛育成の教場になるとも考える。空間づくりとして重要なことは、地勢や歴史、文化を読み解き、地域の人口構成、産業、資源などに見合った、地域にオリジナルな「リ・デザイン」を行うことである。何より肝心なのは、住民とともに未来図を描き、実現に向けて意識を共有しながら行動することである。

2004年に景観法が制定されてから10年経過した。568団体が景観行政団体(14年1月時点)になり、個性を生かした地域づくりに知恵と工夫が凝らされている。日本人は古くから、自らを自然の一部とみなし、崇め、慈しみ、畏敬の念をもって接してきた。今後も、地域に育まれた特徴ある精神文化を継承し、個性ある生活景を慈しみ、つくり上げ、観光を含めた新たな産業資源としての地域振興に結びつけていくことが求められる。何よりも市民、企業、専門家と自治体との民主的な合意形成・計画決定やまちづくりのパートナーシップの仕組みづくり、老若男女のシチズンシップをもつ人材が必要とされている。

心の豊かさを形にできる知恵と工夫、特に地域景観はそこに住む人々の営みを重ね、相互に調整し合うコミュニケーションを通してさらに洗練されたものとなっていく。なによりも次世代を担う子どもは私たちのつくった環境を範として、美意識、感性を育てていく。

 
(写真)東教授と学生、地域住民、行政が共同で進めている折戸公園整備事業のイメージ図。来年春に完成予定

ひがし・けいこ 1953年東京都生まれ。多摩美術大学大学院修士課程修了。専門は環境デザインの実践と研究など。