Column:Point Of View
2015年1月1日号
東京オリンピックまで5年
理学部化学科 関根嘉香 教授

東海大学の吹奏楽研究会(スイケン)はすごいらしい。ここ数年そんなうわさが広まり、演奏会には聴衆が詰めかける。筆者は昨年10月、新潟県で開催された全国大会「全日本吹奏楽コンクール」を初めて聴きに行った。各地区の予選を勝ち抜いた強豪ぞろい。最初に登場した大学の演奏技術と表現力の豊かさ、学生ならではの一期一会の気迫に圧倒された。スイケンの登場を待つ間、不安と期待が交錯する。

何校かの演奏を聴くうちに、素人ながら選曲と技能に相関関係があることがわかってきた。課題曲は行進曲風から現代音楽風の楽曲まで複数あるが、金賞を目指す有力校は後者を選ぶ傾向にある。我がスイケンは、これまた難解な現代音楽風の曲を選び、その演奏がいよいよ始まった。身内という要因を全力で差し引いても、演奏には引き込まれるものがあり、他大学に比べてその音色に明らかな特色がある。音に迫力があり、かつ耳に優しい。例えるなら、フィギュアスケートで金メダルを獲得したトリノ五輪の荒川静香選手、ソチ五輪の羽生結弦選手の演技を見たときの興奮。3年連続金賞(日本一)という栄誉だけでは語れない「良質の感動」があった。

さて、2020年の東京オリンピックまであと5年。出場を目指すアスリートたちは日々精進を重ねているだろう。競技である以上、勝利を目指すのは当たり前で、日本のメダル獲得数に関心が集まるのは至極当然である。その一方、近代五輪の父・クーベルタン男爵の有名な言葉がある。「五輪は勝つことではなく、参加することに意義がある」。五輪が他の競技会と一線を画す理由の一つがここにある。

五輪は競技者だけでなく、多くの人の支えがあって初めて開催できることは言うまでもない。そして世界の目が、開催地東京、ひいては日本に注がれる。ホスト国にいる我々は多かれ少なかれ、意識・無意識の中ですでに東京五輪に参加しているといえる。筆者も暗黙の参加者の一人として、専門分野である環境化学を通じて、東京オリンピックに寄与したいと考えている。美しい日本の環境を守る努力を世界に発信したい。メダルの数だけでは語れない、「良質の感動」を生む素地をつくるために。

(筆者は毎号交代します)