Column:本棚の一冊
2015年3月1日号
『おしゃれなエコが世界を救う』



世界をよい方向へ導く

教養学部人間環境学科自然環境課程
岩本 泰 准教授


「ラナプラザ」事故を知っているだろうか。バングラデシュの首都ダッカ北東部に位置する工業地区・サバールの一角にあったアパレル工場こそラナプラザ。違法増築を繰り返していたこともあり、以前から建物の安全性が不安視されていたにもかかわらず、2013年4月24日に「ラナプラザビル倒壊事故」は起きてしまった。
 
1100人以上の縫製工場労働者が犠牲となり、2500人以上が負傷、200人近くが行方不明になってしまった惨事は、世界に衝撃を与えた。しかも、こうした工場で安い労働力を搾取する形で仕事を発注していたのは、誰もが知っているファストファッションブランドだった※。
 
私たちの着ている服がどこから来て、誰が作ったものか、その服の原料のコットン栽培にはどのくらいの農薬が使用され、染色や漂白に対する環境や健康問題がどのくらい深刻なのかなどを考えたことはあるだろうか。
 
そこで今回お勧めしたいのが『おしゃれなエコが世界を救う』(サフィア・ミニー著)である。実は昨夏、フェアトレードに関する情報収集のためイギリス・ロンドンに滞在し、エシカルファッションブランド「ピープルツリー」のオフィスを訪ねた。そのとき偶然にもサフィアさんにお会いしたのが最初の出会いである。
 
身の回りの服一枚が私たちの手元に届くまで、たくさんのバックストーリーがあること、消費者の選択次第で、生産者を幸・不幸にすることなど。この本は、サフィアさんが高校を卒業してからさまざまな問題を乗り越え、20年にわたり現在まで生産現場の構造的問題を明らかにし、そして日本とロンドンでフェアトレードカンパニー「ピープルツリー」を創設、問題構造に変化をもたらそうと挑戦し続けているライフヒストリーである。
 
サフィアさんは、「買い物ひとつでも、何を選ぶかによって世界をよい方向へ導くことができる。この本を読んで、行動を起こす人が一人でも増えることを願っています」と本の中で述べている。
 
さらに最近の動きをまとめた新刊本『NAKED FASHION―ファッションで世界を変える』もお勧めしたい。彼女の活動の輪が広がっているのがわかるだろう。

※参考=国際人権NGO「ヒューマンライツ・ナウ」:http://hrn.or.jp/activity/project/cat10/post-288/

『おしゃれなエコが世界を救う〜女社長のフェアトレード奮闘記』
サフィア・ミニー著
日経BP社

 
いわもと・ゆたか
1970年神奈川県生まれ。東京学芸大学大学院連合学校教育学研究科学校教育学専攻修了。専門は環境教育・ESD・開発教育。