Column:Point Of View
2015年4月1日号
春の色はどんな色
農学部応用植物科学科 松田 靖 准教授

私たち世代には懐かしく、その子ども世代にあたる学生にとっても耳なじみのある松田聖子の「赤いスイートピー」。この曲の中で、春の色を連想させる歌詞が登場するが、皆さんは何色を思い浮かべるだろうか?

研究室の学生からの回答にインターネットの検索結果を加えると、「ピンク」の圧勝となった。おそらく今ここを読まれている多くの方も同じ回答だろう。でも、なぜ春色=ピンクなのか? 答えはこの回答の中に潜んでいる。ピンクという答えでも「淡いピンク」「薄いピンク」。そんな言葉に混じって「桜色」。

そう、春はサクラ、サクラはピンクと連想されているのだ。ところが、同じ質問を欧米で行うと答えは全く違い、「淡い緑」から「黄緑」に集中する。これは植物の新芽、芽吹きの色を想像するかららしい。いずれにしても植物の活動から「春」を感じていることには違いない。

では多くの人が春を感じるピンクの花が、本当に春に多いのか。確かに花屋をのぞくと、赤からピンクのゾーンが最も多いように見える。しかし、これらの多くはヒトの好みに合わせてさまざまな色や形、特徴が選ばれたもの。つまり品種改良によって変化したものなのだ。では人為的に変えられていない自然の条件下ではどうだろう。

実は植物種の数でいえば、「黄色」が圧倒的に多い。たとえば、フクジュソウ、タンポポ、アブラナ(菜の花)、ラッパスイセン、レンギョウ……。特に早春に開花するものに多くみられる。春に限定せず、日本の植物種を花の色で分類すると、「白」と「黄色」が30%をこえてトップを争い、赤は10%程度とそれほど多くないと報告されている。その理由の一つに挙げられるのが昆虫の影響。ほかの花の花粉でなければ受精できない他殖性の植物は、第三者に花粉を運んでもらう必要がある。その相手が風から昆虫へ変わり、昆虫が訪れやすい色を持つ植物が生存できた結果。つまり、花の色も植物が選んだ生き残り戦術の一つにすぎないのだ。

それをわかっていても、やはり春の色は桜色。新入生を迎える背景は「黄色」より「桜色」が似合う気がするのは私だけではないはず。桜色は気持ちを新たにさせてくれる色なのかもしれない。

(筆者は毎号交代します)

まつだ・やすし 1967年福岡県生まれ。宮崎大学農学部卒業後、鹿児島大学大学院連合農学研究科博士課程満期退学。博士(農学)。専門は植物育種学、植物組織培養学。