特集:キャンパス展望
2010年7月1日号
今しかできないことに挑戦を
情報理工学部コンピュータ応用工学科 浅川毅准教授

新宿と小田原を結ぶ小田急小田原線。その間に47個の駅があり、新宿から数えて38駅目に東海大学前がある。学生たちから「学前」と親しまれている。私は、かつてこの駅がまだ大根(おおね)と呼ばれていたころにここで学んだ。駅名変更のニュースをOBとして大いにうれしく聞いたものであった。本学に戻り7年目を迎える今、当時の記憶のほとんどが塗り替えられてしまい、研究室の窓から眺める大きな16号館や背丈の伸びたケヤキ並木がわずかに違いを感じさせるだけである。現代文明論を受けた2号館や徹夜でデータ取りをした5号館の地下実験室もそのまま残っている。記憶に残るメッセージすらもその時々のものとなっていく。だからこそ今を大切にしてほしい。

湘南キャンパスは、阿蘇ほどではないが広大な校地の中に余裕を持って建てられている。空、土、植物との調和がとても素晴らしい。好きな場所は松前記念館から石畳を下った総合グラウンドと野球場の間の小道である。春は桜のピンクで彩られ、秋は銀杏の金で塗りつぶされる。特に春のピンクはかわいらしく、踏み潰すにはばかられる。とても緩やかに流れる朝の時間で、汗をかいて移動していた学生のころが嘘のようである。学生諸君に言いたい、キャンパスをもっと知ろうよ。

キャンパス周辺も見逃せない。北に丹沢山地、南に湘南海岸、その間を金目川がつなぐ。付近の土屋橋あたりでは、小魚やうなぎが獲れる。小魚はこども実験教室の土産に、うなぎは学生と食べる。私はなんとか、うなぎをさばくことができるのである。縁があって静岡三島の川魚卸屋さんで手ほどきを受けたことによる。三島のうなぎがおいしいのは、柿田川で有名な富士山地下水の湧水を使って泥抜きをしているからと言っていた。うなぎは浜名湖から来るらしい。水源を大山とする我らが金目川の天然うなぎもなかなかのものだ。もちろん釣りも調理も学生と一緒に行う。中にはコンピュータの設計以上に包丁さばきに興味を示す者もいて、マイ包丁持参で現れる。「コンピュータ応用工学科に入ってきたんだろ」などと言わない。彼らはいずれも真剣なのだ。いかなる場面でも学生の真剣な顔が見られるのはとてもうれしい。けじめとメリハリをつけられるように大いに学び、大いに遊んでほしい。

私は学生時代にたくさんのことをやり残してしまった。湘南キャンパスでの生活においても然りである。より多くの学友と出会い、もっと広く付近に溶け込むことによって、さらに多くの宝物を発見できたに違いなく残念でならない。本学にはチャレンジセンター、海外研修航海、ダブルディグリーや留学プログラム、部活やサークル、副専攻制度、知的財産本部などなど、出会いと実現のチャンスがあふれている。ぜひ、将来の糧となるたくさんの力を学生時代に培ってほしい。お決まりだが、一度しかない青春を謳歌しよう。

 
あさかわ・たけし 1960年東京都生まれ。東海大学工学部電子工学科卒業。東京都立大学大学院工学研究科電気工学専攻修了。専門はLSIのテストおよびマイクロコンピュータの応用。