Column:知の架け橋
2015年5月1日号
「国際化を考える」
工学部応用化学科 稲津敏行 教授

専門分野と国境をこえて世界的研究者になろう!

「先生、もっと早く海外に来ておけばよかった!」

数年前にスペインのマドリードで行われた「国際糖質シンポジウム」に参加した際に、大学院生の一人がカフェでランチをとりながら発した言葉です。彼らは、日本と全く違う文化や慣習に驚きながらも、日欧のそれぞれのよさに気づき、“井の中の蛙(かわず)大海を知らず”であったことを残念がっていたのです。

ところで、研究には境目がなくなったと常々感じています。筆者の専門である化学でも、以前は「無機化学」「有機化学」といった境目が厳然としてありました。しかし、最近ではその差があいまいになり、融合してきています。また、土木工学科の先生から「土木学会も材料に焦点が移り、さながら化学会のようです」というお話をうかがったことがあります。確かに、授業カリキュラムでは異なる科目として、身につけるべき基礎的なことを教わる必要があります。また、学科によって身につける内容が異なるのは当然です。しかし、卒業研究から始まる研究の世界には境目はありません。

同じことを地球レベルでも考えることができます。あなたが研究活動に入り、素晴らしい成果を上げたと考えてみましょう。その成果を日本語で発表すると、日本語のわかる研究者がその成果を知るだけです。ところが英語で発表した場合は、ほぼ世界中の研究者が知ることができます。すなわち、あなたの研究成果は人類の知恵になるのです。

英語で発表する方法は二つあります。一つは国際学術雑誌に英語論文を投稿する方法、もう一つは学会に参加し英語で発表する方法です。特に、国際会議は有力な武器で、学術発表や学術討論以外に大きな意味があります。それは海外の研究者とface-to-faceの関係を築くチャンスだということです。

「英語が苦手だから」などと言ってはいられないのです。私も学生時代、英語は苦手でしたし、今でも苦手です。でも、英語で外国人と自らの研究成果を話すときは、試験ではありません。上手下手ではなく、お互いに通じ合うことが重要です。研究者としてお互いの考えをわかり合えたとき、それは何にも代えがたいすてきな瞬間です。ひとたび議論した研究者同士は、すぐに友人となり、長い交流が始まります。そのような外国の先生や友人をあらためて訪れたり、また、何人も本学にお招きしたりしています。

ひるがえって、本学の研究環境を考えてみると、さまざまな国から留学生が来ています。大学院博士課程にも毎年多くの留学生が入学します。ポスドクの研究者も多国籍化しています。さまざまな国と研究協力することの重要性も増してきています。学生の皆さんが、技術者・研究者として羽ばたくころにはもっと地球は小さくなっているはずです。今年の入学式で山田清志学長が「いずれ学生全員を留学させたい」という話をされました。せめて大学院生には、短期留学や国際会議での発表、海外研究室訪問などの海外経験を、早い時期に、そして、たくさん積んでほしいと思います。決して井の中の蛙にならないために!

 
(写真)2012年の「国際糖質シンポジウム」に参加した学生たち

いなづ・としゆき 1955年神奈川県生まれ。東京理科大学大学院理学研究科博士課程修了(理学博士)。財団法人野口研究所で糖鎖の研究に従事し、糖鎖有機化学研究室を創設。2003年度より現職。15年度より大学院総合理工学研究科研究科長を兼務。