特集:研究室おじゃまします!
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2020年3月1日号
国内最大級のソーラー無人飛行機を開発
企業と連携し災害時に活用 自動操縦にも成功

ソーラー無人飛行機と通信衛星、ドローンを同時に用い、自動操縦で遠隔地の情報を収集する世界初のシステムを開発する―。東海大学が企業・研究機関と共同で進めてきた研究開発プロジェクト「衛星通信を利用するドローンの運行管理システムの開発」が大きな成果を収めた。昨年8月と9月に北海道大樹町で国内最大級のサイズとなる翼幅約16メートルのソーラー飛行機の自動操縦と人工衛星との通信試験に成功。12月27日には静岡県富士市で最終動作確認も行った。

2017年度に始まったこのプロジェクトは、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構による公募事業「ロボット・ドローンが活躍する省エネルギー社会の実現プロジェクト」を受託し、東海大がスカパーJSAT蠅髪宙航空研究開発機構(JAXA)、情報通信研究機構(NICT)と連携して進めてきた。

東海大は飛行機の開発を担当。スカパーJSATの衛星通信技術と、JAXAの遠隔地での情報モニタリング技術と自動制御技術、NICTの無線通信技術を組み合わせ、災害時に地上通信網や交通等の社会インフラが遮断された場所などの情報を遠隔で収集できる統合システムの構築を目指してきた。

東海大から工学部の福田紘大准教授をはじめ、木村英樹教授、新井啓之研究員が参加。福田准教授は、「本学はソーラーカーや無人飛行機開発では国内トップの技術を持っています。その総力を結集し、各機関の特徴を生かした」と話す。

開発にあたっては、17年に東海大が所有する両翼約7.2メートルのソーラー無人飛行機「サンファルコン2」を使った試験飛行を実施。その結果をもとに、通信機器やデータ記録装置を搭載し、太陽電池エネルギーを使って低速で安定飛行できる飛行機の開発を進めてきた。

昨年9月の飛行および通信試験では、事前にプログラムされた航路を自動で飛ぶことに成功しただけでなく、飛行中の電気消費量や各部の動作情報をリアルタイムで記録。人工衛星との通信にも成功した。設計・製作を指揮した新井研究員は、「大型かつ低速で飛べる飛行機を製作できたこと自体が大きな成果。日本が立ち遅れているソーラー無人飛行機開発の分野を切り拓く貴重な研究データも得られた」と語る。

学生も参画し開発の現場を経験

プロジェクトには、チャレンジセンター「ライトパワープロジェクト」でソーラーカーや人力飛行機の開発に取り組んできたメンバー、工学部電気電子工学科、航空宇宙学科の学生、大学院生約10人も参加。機体の設計や製作を担当した。連携機関の技術者らから寄せられる要望を踏まえて試行錯誤を重ね、飛行試験の現場では企業や研究機関による研究開発の様子にも触れた。

山下善基さん(工学部4年)は、「仲間とアイデアを出し合いながら開発していく過程で専門分野への理解が深まった。真面目に作業に取り組むことの大切さや開発者の情熱にも触れることができた」と成果を語る。山田隼貴さん(同)は、「開発の過程でメンバーも大きく成長できた。この経験は社会に出てからも生きる」と語った。

JR東日本からの国内留学生として学んでいる菅野雄太さん(同)も、「電車の運行を支える電力システムの基盤を理解するうえでも、電気の配線の知識は重要。そのスキルを磨けただけでなく、安全対策プラン立案の手順も学べるなど充実したプロジェクトだった」と成果を振り返った。

プロジェクトの活動は今年度で終了するが、東海大では今後も機体の改良を続けつつ、研究を重ねる計画だ。福田准教授は、「この分野のパイオニアとして、さらなる技術開発につなげたい」と話している。

【Column】ビッグプロジェクトを支えた 四半世紀をこえる研究

国内最大サイズのソーラー無人飛行機開発を支えたのは、30年以上にわたって活動を続ける人力飛行機プロジェクト、1991年に始まったソーラーカーの研究(ともに、現・チャレンジセンターライトパワープロジェクト)、2012年からソーラー無人飛行機の研究を通して培ってきた技術と経験だった。

福田准教授は、「今回の共同プロジェクトで東海大が飛行機開発を担うことになったのも、過去の実績が評価されたから」と語る。航空宇宙学科の卒業生で、故・平岡克己教授とともにソーラー無人飛行機の研究に携わってきた新井研究員も、「重量バランスや空力特性のデータは人力飛行機の考え方がベースにあり、電気系統はソーラーカーのノウハウが生かさ
れている。また、今回のプロジェクトに参加した学生たちも、ライトパワープロジェクトなどで活動経験がある。彼らの経験も不可欠だった」と話す。

それを実証する学生の一人が那須順敬さん(大学院工学研究科1年)だ。ライトパワープロジェクトで人力飛行機とソーラーカーに魅せられ、「ここでしか経験できないチャレンジがしたい」と今回のプロジェクトにも参加した。「製作過程や個々の作業は人力飛行機と同じだったので、戸惑うことはほとんどなかった」と振り返った。

「自ら道を切り拓ける社会人になるためにも、こうした実践経験を学生時代に積むことが大切」と福田准教授。「大きな成果は次への第一歩。この経験を糧に次世代のリーダーとして活躍してほしい」と語っていた。

 
(写真上から)
▼9月に行われた大樹町での飛行試験。通信機器との送受信テストも無事に成功した
▼試験では学生たちも活躍。それぞれの経験を生かしててきぱきと作業に取り組んだ
▼12月の最終動作確認では、各部の動作確認と滑走試験が行われ、今後の研究につながるデータを収集した
▼ソーラー無人飛行機の研究は、2012年から17年まで、サウジアラビアのキング・アブドゥルアジーズ大学との共同プロジェクトとして展開された