News:研究
2017/05/01 新規インスリンの化学合成に成功
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2017/04/01 国内外の研究者と意見を交わす
2017年5月1日号
新規インスリンの化学合成に成功
理学部化学科の研究グループ

理学部化学科の荒井堅太講師と岩岡道夫教授らの研究グループが、新たなインスリン製剤(セレノインスリン)の化学合成に成功。天然由来のものに比べてインスリン分解酵素に対する耐性が高く、長期間にわたって体内で循環・作用する「持続型(持効型)」の性質を持つことを明らかにした。成果をまとめた論文が4月10日付けで国際科学雑誌「Angewandte Chemie International Edition」電子版に掲載された。

インスリンは、世界で4億人いるといわれている糖尿病患者の命をつなぐ唯一の薬剤として広く用いられている。しかし、患者は注射器で1日に何度もインスリンを体内に皮下投与する必要があり、肉体的・精神的に大きな負担となっている。インスリン製剤の合成は、現在は遺伝子組み換え処理を施した天然由来の大腸菌や酵母を使って発現させる手法が用いられており、微生物を一切用いない化学反応のみによる合成は実用化されていなかった。

荒井講師らのグループは、東北大学や大阪大学と連携し、セレン原子を含むインスリンのもとになる2本のポリペプチド鎖を合成し、そこから目的のセレノインスリンを効率よく得ることに成功した。さらに、細胞を使ったセレノインスリンの生理活性評価では、天然のものと同等の機能を持つことが明らかになった。また、腎臓に含まれるインスリン分解酵素を使った実験では、分解速度が著しく遅いことも判明した。

荒井講師は、「化学合成に成功したことは、創薬の新たな一歩を拓くものだと考えている。この製剤が実用化できれば、患者の負担の軽減につながると期待している」と話している。

 
(写真)研究に取り組んでいる荒井講師(右)と岩岡教授