熊本地震から1年――
前を向き“新たな一歩”を熊本校舎で4月15日に東海大学主催の「熊本地震1周年学内集会」が、翌16日には阿蘇校舎で農学部主催の「熊本地震慰霊式」が、それぞれ行われた。平成28年熊本地震発生から1年の節目を迎えるにあたって、地震で尊い命を落とした農学部の学生をはじめ、すべての犠牲者を慰霊することを目的としたもの。あの地震から1年―─教職員、学生たちは前を向き、“新たな一歩”を踏み出している。
「震災発生から農学部が授業を再開した7月1日までは非常に長く感じられましたが、この1年の節目はあっという間に迎えた気持ちでいます」
熊本校舎新1号館1階ロビーに集った学生、教職員ら約350人に向けてあいさつに立った山田清志学長は、地震直後の対応や、各学部の授業再開、今後の方針説明会など節目を振り返りながら語りかけた。「時の流れの速さを感じながらも、それに流されることなく、今日は皆さんとともにこの1年間のことを思い起こし、新たな一歩を踏み出す機会としたい」
続いて、学生を代表して阿蘇体育委員会の田中大智委員長(農学部3年)が登壇。志半ばにして尊い命を失った農学部の学生3人に向けて慰霊の言葉を述べるとともに、「熊本の復興にはまだまだ時間がかかりますが、私たちにできるのは地震の記憶を決して風化させず、苦しくてつらい経験をこれからの人生の糧とすることです。3人の仲間の分も前を向いて歩んでいく」と力強く誓った。
その後は、参加者を代表して山田学長や荒木朋洋九州キャンパス長(農学部長)ら教職員と田中さんら学生の代表が献花し、参列者全員で黙祷。終了後には参列者も順に献花の列に並び、地震で亡くなった方々に哀悼の意を示した。
特色を絶やすことなく農学部の復興を誓う
農学部の慰霊式は、建物の被災状況や安全面を考慮して、比較的損壊の少ない2号館と3号館前のスペースで執り行われた。熊本・阿蘇両校舎の教職員や農学部の代表学生17人を含む計約120人が参列。参加者は、大きな被害を受け使用できなくなった1号館に向けて設置された祭壇の前に整列し、全員で犠牲者に黙祷を捧げた。
追悼の言葉では、山田学長が亡くなった農学部生たちに向けて「この農学部をさらに前進させる」と誓い、続いて荒木キャンパス長が、「残念ながら同じ場所に建物を建てることはできません。しかし、農学部の特色を絶やすことなく、教職員一丸となり復興に取り組んでいきます」と決意を述べた。
学生も気持ち新たに未来への決意を語る熊本校舎での学内集会に参列した江口麻耶さん(経営学部4年)は、「想像していなかった揺れに、ただただ驚きましたが、地震後は何か熊本の力になりたいと思い、募金活動もしました。女子バスケットボール部に所属しているので、スポーツを通じて地域を盛り上げていければ」と意気込む。教員志望の加藤康之さん(農学部3年)は、「この震災を風化させないように、子どもたちに経験を伝えていく」と決意を口にした。
農学部の慰霊式で献花した興梠早紀さん(同4年)は、「1年前のこの時間も同じように晴れていて、下宿と避難所を行ったり来たりしていました。1年が経ちましたが、地震が起きなければ慰霊式も行われなかったはず。“なぜ今、私は献花をしているんだろう”という思いでいっぱいです。志半ばで亡くなった3人の分も頑張る」と前を向く。農学部生たちは、「感謝の気持ちを込めて、地域のために活動できれば」とそれぞれに思いを語った。
(写真上)阿蘇校舎1号館を望むスペースに参列者が集い、犠牲者を悼むとともに、復興に向けて進んでいく決意を新たにした
(写真下)16日には南阿蘇村の追悼式も行われ東海大関係者も出席